【10月28日 AFP】米カリフォルニア(California)州の大規模な山火事で、約40人のメキシコの消防隊員が消火活動に参加している。メキシコの消防隊員が米国で消火活動を行うのは初めてだという。

 メキシコのティフアナ(Tijuana)消防署は両国の国境付近の同州サンディエゴ(San Diego)郡東部の消防隊ベースキャンプに、消防指令長、指揮者、連絡担当者、消防士35人、消防車4台を派遣した。

 ここで彼らは、称賛と尊敬の意味を込めてスペイン語で消防隊員を意味する「bomberos(ボンベロス)」という言葉で呼ばれている。ベースキャンプでは、ティフアナのボンベロス、米連邦の消防隊員、米西部各地の消防隊員、消火作業に動員されたカリフォルニア州の受刑者らが長い列を作って夕食の順番を待っている。

 「消防士は消防士だ。メキシコ人だろうがアメリカ人だろうが関係ない」ティフアナ消防署のマルコ・アントニオ・サンチェス・ナバロ(Marco Antonio Sanchez Navarro)署長は話す。

 しかし、メキシコの消防隊員が置かれた環境は米国の消防隊員のそれとは異なる。彼らはより少ない装備でより速くより多くのことをしなければならない。

 事実上、住宅を含むすべての建物に保険加入とスプリンクラー設置が義務づけられている米国では、消防隊員は延焼を防ぐため躯体を完全に焼失させることができる。一方、木造の住宅が建ち並ぶ貧困地域を中心に保険に加入したスプリンクラー付きの住宅があまり一般的ではなく、家屋が全財産という家庭も多いメキシコでは、少しでも家屋や財産を守るため危険を冒してでも消火せざるを得ないという。

 ティフアナボンベロスの年収は1万3200ドル(約150万円)で、米国の消防隊員の初任給の3分の1にも満たない。ここ1週間のカリフォルニア州での消火活動に対する特別な手当もない。

 違いはベースキャンプでの宿泊方法にも表れている。サンディエゴ郡外から来た米国の消防隊員がホテルに宿泊しているのに対し、メキシコの消防隊員は動員された受刑囚が宿泊している近くにテントを張って、簡易ベッドではなく寝袋で寝ている。

 さらに、サンディエゴ郡に派遣されたメキシコの消防車の1台は、米国の消防署で使われなくなったものを中古として導入したものだ。

「ボンベロスは最高だ!」とカリフォルニア州森林火災予防局(California Department of Forestry and Fire ProtectionCal Fire)の消防技術者、ウェンディ・ミラー(Wendi Miller)氏は絶賛する。同隊のロリ・ウィンザー(Lori Windsor)隊長も「よく働いてくれるし、家族の一員だ。頼りがいがある」と称賛した。(c)AFP