【7月13日 AFP】北朝鮮の金剛山(Mount Kumgang)で韓国人観光客が北朝鮮兵に射殺された事件で、韓国政府は13日、北朝鮮側の事件説明に疑問を呈した。

 韓国統一省の金浩寧(キム・ホニョン、Kim Ho-nyeon)報道官は、「(ツアーを実施した)現代峨山(Hyundai Asan)に対して行われた北朝鮮側の事件説明は、常識的に考えて説得力がない」と述べた。

 北朝鮮の金剛山を観光していた韓国人女性、朴ワンジャ(Park Wang-ja)さん(53)は11日、観光客の立ち入り禁止区域で北朝鮮兵の銃撃を受けて死亡した。ホテルに近い海水浴場へ明け方前に散歩に出かけていたと見られている。

 北朝鮮側は、女性がフェンスを越えて軍の立ち入り禁止区域に入り、兵士の停止要求に従わずにホテル方向へと逃走したため発砲したとしている。北朝鮮の発表によると、朴さんは11日午前4時50分ごろフェンスから200メートルほど入ったところで射殺された。

 金報道官は、朴さんが宿泊していたホテルの防犯カメラに、午前4時30分に外出する朴さんが映っていたと発表。ホテルは海水浴場から706メートル離れており、また海水浴場入り口から立ち入り禁止区域に設置されたフェンスまでは428メートルの距離があるという。

 さらに、聯合(Yonhap)ニュースによると、同報道官は、北朝鮮兵が女性を目撃したと主張している地点はフェンスから1200メートル先だったと指摘。つまり、女性はホテルから1キロ以上離れたフェンスまで移動し、フェンスを越えてさらに1.2キロ進んだところで北朝鮮の兵士に見つかり、1キロほどフェンスの方向に戻ったことになる。

 金報道官は朴さんは砂浜を3キロも歩いたことになるとして「50代の女性が、20分で砂浜を3キロも歩いたというのは信じがたい」と述べた。

 北朝鮮側は、射殺について遺憾の意を表明したものの、責任は韓国側にあるとして韓国政府に謝罪を要求。また、韓国政府の調査団受け入れを拒否している。

 それを受けて韓国政府は13日、銃殺はいかなる理由でも正当化できないと発表。また、北朝鮮に対し、韓国政府調査団の受け入れをあらためて要求した。(c)AFP