【8月21日 AFP】世界的に「死刑の街」として知られるテキサス州ハンツビル(Huntsville)では、22日に400人目の死刑が執行される。この街の住民は世間から、あわれな死刑囚を処刑室に追い立てる、容赦のないカウボーイか看守かごとく見られているという。

■無関心が支配するハンツピルの地域社会

 テキサス州に7つある死刑囚監房の1つ、ハンツピル死刑囚監房は別名「The Walls」と呼ばれる。この中で実際には何が起こっているのか、住民はきわめて曖昧にしか理解していない。

 死刑執行については、興味を抱く人もいれば、恐れを抱く人もいる。しかし、ハンツビルの住民のほとんどは、自分の町が死刑の是非に関する世界的な議論の中心にあることを理解していない。

 「The Walls」から数ブロックのところに事務所を構えるケリー・シムズさんは、ハンツビルで生まれ育ち、この街で子どもを育てる市民のひとりだ。

「わたしが生まれ育った頃は、地域社会は死刑に関して無関心が支配していた。わたしたちは単にここで生まれ育っただけで、そこで死刑が行われているかどうかは、住民にはどうでもよいことだった。そういうものだと思っていた」と話す。

■死刑執行日、「The Walls」に集まる限られた関係者

 裁判と判決の宣告はまったく別の場所で行われ、死刑囚となった被告は州内のリビングストン(Livingston)にあるポランスキー死刑囚監房(Polunsky Unit)に送られる。そして処刑の日、死刑囚は「The Walls」に移送され、最後の時を迎える。

 実際に死刑執行に関わるのは、刑務所の官吏、教戒師、報道陣、そして鏡の向こう側で死刑囚から姿を見せずに処刑を行う執行人のみだ。ギロチンによる処刑が行われていた当時と同じく、今でも執行人の身元は極秘条項とされている。

 また、事件の犠牲者、死刑囚、双方の家族が「The Walls」にやってきて、最後の時を待つ。「処刑を見届ける」という同じ目的のためにやってくるが、双方が顔を合わせることは決してない。官吏は、双方の家族が異なる時間に、異なる部屋に入るよう気を遣う。処刑を見届ける部屋には鍵がかけられ、突然、誰かが部屋を飛び出し、別の家族と顔を合わせるようなことが起こらないようになっている。

■テキサス州でも死刑反対運動が

 一方、死刑執行の日には、「The Walls」の前に死刑に抗議する人々が列を作る。デーブ・アトウッド(Dave Atwood)さんはその1人だ。

 テキサス州ヒューストン(Houston)の住人で、「テキサス死刑廃止連盟(Texas Coalition to Abolish the Death Penalty)」の創設者でもあるアトウッドさんによると、死刑が執行される夜には、テキサス州全土で抗議の集会が開かれるという。

 「15年前から反対運動を始めた。処刑の日、ここに来るたびに強い怒りを覚える。こんなことを認めているみんなに怒りを覚えるね。なぜこんなことを黙って認めるんだと」

 「テキサス州は、他の州に比べ死刑制度を強く支持しているといわれている。でも、ここに住む人たちみんなが、死刑制度は奴隷制度同様に時代遅れの遺物であることを理解する日が来ると確信している」(c)AFP/Tori Brock