■食に関して我々は遅れている

「伊勢丹新宿本店は時代を先読みして、時代を牽引しなければならない存在だと思っています。その意味で食の分野に関して我々は非常に遅れています」

そう大西氏は実直に明言する。率直に言うと、新宿伊勢丹のファッションのセレクトと、食品や飲食店のセレクトは、同じレベルにあるようには感じない。ライフスタイル産業の中心が食にシフトを置きつつある中で、大西氏はどう取り組もうとしているのか。

「お客様に集まっていただくためには話題性、つまりそこに行くと何かある、他の場所にないものがあるといったファクターが必要です。新宿伊勢丹に関して言うとレストランやデパ地下のお客様の数は増えているんですが、今のままではだめだと思っています。百貨店の食品とレストランは同質化の最たるもので、ここ5年ほどはほとんど変化していません。レストランも20年くらい手がついていない。ものすごくお客様には入っていただいているし、売上も伸びていますが“これからの食”が感じられないですよね。百貨店の外にはものすごい数のレストランやカフェがあり、世の中の変化とともに人々の注目度や集客がわかりやすく動いています。それを見習って外で話題になっているレストランをそのまま持ってくるのではなくて、そのレベルの飲食店が並んで、カップルのデートスポットになるような雰囲気を持った場所にしたいと考えています。また、デパ地下フロアの洋菓子やお惣菜はどこに行っても一緒なのが現状です。お惣菜も陳列方法や飲食のセレクトは再考の余地があるので、今のライフスタイルフロアの改装作業の次は食・レストランの改革に取り組みます」