【12月22日 MODE PRESS】「ほしいものが、ほしいわ」。

 これは糸井重里氏による1988年の西武百貨店の有名なコピーだ。もはやほしいものが先にあるのではなく、ほしいものを探し求めた上で買うという、消費がある飽和点に達したことを宣言する予言的な言葉だった。はたして僕らは「ほしいものがほしい」と言わせるものを見つけているのだろうか。そしてそれは百貨店の空間の中で発見出来るのだろうか。

 売り上げ日本一の百貨店、伊勢丹新宿本店は2013年度の売り上げが2,680億円。一日の売り上げが7億円を超える消費社会の総本山だ。その巨艦店を擁する三越伊勢丹ホールディングスは、2013年3月の伊勢丹新宿本店リニューアルを皮切りに、羽田空港に小規模のセレクトショップ「イセタンハネダストア」をオープン、アンリアレイジなどがデザインしたTシャツのカスタマイズサービス「イセタンカスタマイズ」のローンチ、ルミネとコラボした新形態小売サービス「ルミタン」をスタートするなど、業種や空間の垣根を超えたコラボレーションを行い、注目を集めている。2013年度全国百貨店売上6兆2171億円のうち1兆3215億円の売上と2割を占め、今年10月の前年同月比売上も三越伊勢丹のみが増加している。

 そのように日本の消費社会の頂点に立つ三越伊勢丹の大西洋(Hiroshi Onishi)社長に、消費社会の行方を巡って話を伺いたいとオファーし、今回実現の運びとなった。百貨店存続の危機感をかねてから明言し、ファッション産業が衰退してきた昨今の情勢を踏まえつつ「もう一度ファッションを伸ばしていきたい」と語る大西社長に「消費の未来」についてお話を伺った。