<菅付雅信:新連載「ライフスタイル・フォー・セール」>第十四回:三越伊勢丹の大西社長が語る、百貨店の未来と見えない価値
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■ライフスタイルショップの限界
この連載でも幾度となく、全世界的に急増している新業態であるライフスタイルショップについてとりあげているが、マスをターゲットにした三越伊勢丹はどのように考えているかを伺ってみた。
「昔は自分の価値観やライフスタイルを発信し、表現する代表選手は服でした。でも今は、その人が持つ価値観、生活感、人間性がものすごく多様化してきて、自己表現する方法は服以外にも様々あります。そういう意味で価値観が似ている方々が集まるパリのコレットが注目されたり、サンフランシスコやブルックリンにライフスタイル型のショップが増えてきたりしていると思います。
一方で三越伊勢丹は社会一般のお客様に開かれたお店であり、いらっしゃるお客様はその方自身のライフスタイルをお持ちなので、それがテイストなのか生活感なのか生き方なのかはそれぞれだと思うんです。そうすると一人ひとりにあった衣食住を縦に揃えなければならないので、非常に難易度が高いです。
理想としてライフスタイル型のお店を作ることは良いことですが、百貨店の場合100人いれば60、70人が一般的なお客様で、百貨店のセレクト力に期待するのがこれらの方々です。昨今のライフスタイルショップをはじめとする何かに特化した“スペシャリティ・ストア”に期待するお客様と百貨店に期待するお客様というのは住み分けが異なります。スペシャリティ・ストアの場合はテイストもグレードもターゲットに合わせて絞ることができます。オーガニックな手法でつくられた商品やオーダーメイドファッションなどもスペシャリティ・ストアから取り入れたい部分ではありますが、百貨店の場合はジェネラルの部分が7割くらい要求されるので、すべてをライフスタイル型にするのは不可能に近いのが事実です」
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