【11月20日 東方新報】中国は世界最大のハチミツ生産大国だ。2020年の生産量は45万8000トンで、世界全体の25.9パーセントのシェアを誇る。2位の欧州連合(EU)の12.3パーセントと比べても倍以上だ。中国のハチミツは日本や英国、ベルギーなど各国に輸出しているが、その多くはハチミツ製品の原料として低価格で輸出されている。缶詰に入れた商品でも、企業ブランド名を入れられない大量生産品だ。その一方で、中国はオーストラリア、ニュージーランド、ドイツなどから多くのハチミツ製品を輸入している。

 中国ハチミツ製品協会によると、中国産ハチミツの輸出平均価格は1キロあたり1.92ドル(約290円)なのに対し、外国産ハチミツの輸入平均価格は1キロあたり20.89ドル(約3147円)と10倍以上の差がついている。輸入ハチミツ製品の中には、もともと中国産ハチミツの原料を精製・加工したものも含まれると考えられる。

 こうした現状の原因は複数ある。

 まず、中国における生産体制の脆弱(ぜいじゃく)さだ。移動養蜂をする生産者の場合、ハチミツを採取できる花を求めて各地を移動するため知識と経験、労力が必要な一方、生産規模の拡大には限界がある。中国のハチミツ生産者の67パーセントが55歳以上で、男女別では女性が56パーセントを占める。高齢かつ小規模な生産者が多く、品質の向上を目指しても簡単にはいかない。

 国内の需要が決して高くないことも影響している。ヨーロッパにおける1人あたりのハチミツ消費量は年間1~2キロ。ハチミツ生産量世界3位のトルコは1人あたり10キロも消費しているが、中国は1人あたり200グラムにとどまる。

 このため、ブランド力を誇る大手企業が育ちにくい。国内のハチミツ製品企業約1100社のうち、年間の売り上げが1億元(約20億7872万円)を超える企業は30~40社にとどまり、10億元(約207億8720万円)を超える企業は1社もない。

 需要の弱さと生産量の多さから中国ではハチミツが低価格で販売され、価格競争により品質の低い商品も販売されるため、消費者の信用も低下している。そしてハチミツを好む富裕層は輸入物の高級品を選ぶという悪循環となっている。

 中国では近年、在来種の中華ミツバチを使い、長距離移動を必要としない定置養蜂を増やし、ブランド化につなげる生産の大規模化に努めている。また、ハチミツの生産量と品質を上げるため生体分子マーカー技術の導入、蜜が採れる植物の多い蜜源地のビッグデータ化、流通チェーンの確立も進めている。生産者の収入を増やし、ハチミツの生産量と品質を高めることで、生産大国でありながら輸入大国でもある現状を変えようとしている。(c)東方新報/AFPBB News