中国の豪雨でEV車が次々水没 「修理できるか」「保険は?」注目集まる
このニュースをシェア
【9月7日 東方新報】この夏、中国各地を襲った豪雨災害で電気自動車(EV)の水没被害が注目された。中国で人気のSUVタイプの高級車に混じって最近増えてきたテスラや比亜迪(BYD)などのEVが、次々と濁流に流されていくニュース映像は衝撃だった。
中国のEV保有台数は約1260万台(6月末現在)と世界トップだ。水没リスクが強く意識されたのは今夏の豪雨災害が初めてだろう。中国メディアによると、中国汽車技術研究センターの専門家は「EVのバッテリーパックが水に浸かると、内部の部品やコネクターが腐食して、絶縁性能が低下したり、バッテリーがショートしたりして発火する恐れがある」と指摘する。
EVの生産コストでは、バッテリーやモーターとそれらを電子制御するシステムの合計コストが全体の約60パーセント以上を占めるといわれる。つまり、EVが水没した場合、ガソリン車よりも修理費は高くなり、中古車として売却した場合も安くなってしまう傾向があるわけだ。
高級EVが一夜にして水の泡となってしまったオーナーも多かったに違いない。もっとも、車両保険に加入していたとしても安心できない。中国メディアは豪雨災害直後に「水没したEVはエンジンを二度点火しないように」と注意を呼びかける記事を掲載している。
車両保険に入っていれば、水没してエンジンがかからなくなったEVの損害はカバーされることになる。しかし、二度エンジンを点火した場合、二度目の点火が引き金となって電気系統がショートした可能性を排除できないため、偶発的な事故を対象にした保険ではカバーされなくなるという。
中国の保険各社は、豪雨災害前からEV向け損害保険に力を入れていただけに、豪雨をきっかけにサービスを宣伝している。中国損保大手の平安損害保険は、7月末の北京の豪雨災害に際して、臨時にレスキュー会社6社と連携して24時間体制で顧客の水没事故に対応したと公表している。
一方で、EV向け車両保険の支払いが急増した影響で、今後、車両保険の価格が値上げされるのではないかと懸念する声も出ている。ただでさえ、EV向け損害保険はガソリン車よりも割高な価格設定になっている。中国でも、ガソリン代の高騰でEVシフトが起きているが、EV向け保険料がこれ以上値上がればその流れを逆行させかねないとの声も出ている。
もう一つ懸念されているのが、中古車市場に発火リスクの高い水没車が出回ることだ。どの国にも事故車を売りつける悪徳中古車ディーラーはいるが、中国も例外ではない。中国で今年最も流行したドラマ「長い季節(漫長的季節)」にも、走行距離も短く事故歴もないといわれて中古車を15万元(約303万円)で購入したタクシードライバーが登場する。実際には、エンジンまで水没した痕跡があったほか、この中古車が犯罪に使われていたことから事件に巻き込まれていくストーリーだ。
現実には、水没した事故歴だけでなく、犯罪にまで使われていたという中古車はめったにないだろうが、用心するにこしたことはない。中国メディアは「中古車を買う場合は専門の第三者機関に鑑定を依頼するのがベスト」と注意を促す。豪雨災害から現代人が学ぶべきことは多いようだ。(c)東方新報/AFPBB News