中国で自分の写真をアップすると「著作権侵害」 賠償請求の事例が増加中
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【8月28日 東方新報】「全くとんでもない話だ!」
中国西部・重慶市(Chongqing)に住む戴建峰(Dai Jianfeng)さんはSNS・微博(ウェイボー、Weibo)のアカウントで怒りをぶちまけた。戴さんは天体や星の写真を撮影するプロのカメラマン。戴さんによれば、自分の公式アカウントで使っている173枚の写真について、視覚中国(Visual China Group)という会社から「著作権侵害に当たる」と言われ8万元(約160万円)余りの賠償を求められたという。戴さんが確認したところ、著作権侵害と指摘された写真は、全て自分自身が撮影した作品だったという。
視覚中国は写真などのコンテンツをライセンス販売する会社。設立は2000年6月。2022年時点で4億枚の図画、3000万本の映像と35万曲の音楽など販売可能な素材を有する世界最大級のプラットホームと自称する。
戴さんは視覚中国と契約を交わしたこともなければ、彼らのライブラリーに写真をアップロードしたこともなく、「視覚中国が違法に著作権を取得し、販売している」と訴えた。
しかし視覚中国は、戴さんの主張は「ただの誤解にすぎない」として、次のように説明した。
「戴さんはコンテンツ会社Stocktrek Imagesに写真を販売し、Stocktrek Imagesはそれらをさらに大手コンテンツ会社ゲッティイメージズ (Getty Images)に販売した。視覚中国はゲッティイメージズの中国における独占パートナーなので、戴さんの写真を販売する権利は完全で明確だ」
これを受け、戴さんは即座に視覚中国の主張を「受け入れられない」と反撃した。なぜなら、戴さんがStocktrek側に確認したところ、「視覚中国には戴さんの作品を販売する権利も作品の著作権もない」と明確な回答を得たからだった。
「ここに誤解は存在しない。あなた方はネット上で私の作品を違法に販売し、私や他人に対し作品の著作権を持っていると嘘をついて賠償請求している。直ちに権利侵害を停止するように!」
戴さんがこの反撃をしたのは8月16日。同日中に視覚中国のライブラリーから戴さんの写真は検索できなくなった。
知的財産権に詳しい専門家は、視覚中国が主張したような権利の流れについては「各段階の権利の譲渡状況を厳格に検証する必要がある」と指摘する。もし、きちんとした許可を受けていない場合には、著作権の販売やその権利を守ろうとする行為に法的根拠はないという。
一部メディアは「視覚中国のやり方は、正当な権利がないにも関わらず著作権の使用料を一方的に主張するでっち上げ的な手法だ」と非難する。何より視覚中国には「前科」もある。2019年、国際協力プロジェクトにより人類史上初めてブラックホールの撮影に成功した際に、視覚中国がこの画像の中国国内での著作権を取得し、商業利用の場合には使用料を求めていると指摘を受けた。撮影したプロジェクトチームが「出典を明らかにすれば画像は誰でも使用できる」としたにもかかわらずだ。この点を指摘され、当時、視覚中国は「この写真の版権は独占的ではない。写真は報道使用のみで、許可なく商業使用はできない」などと苦しい言い逃れをした。
同じ年、中国の国旗や国徽の写真についても使用料を求めたことが話題となり、中国共産党の青年組織「共青団」が公式アカウントで「国旗や国徽の版権は貴社のものか?」と疑問を投げかけた。視覚中国はそれらの画像をライブラリーから削除した。
これらの例が物語るのは、視覚中国だけの問題ではなく、中国社会の知的財産に対する意識がまだまだ発展途上にあるという点だ。
2021年に中南財経政法大学(Zhongnan University of Economics and Law)の趙徳馨(Zhao Dexin)教授が学術文献や論文などのデータバンク「中国知網(CNKI)」を訴えた事件もその一端だ。「中国知網」は本人の許可なし100本余りの論文を収録しながら、教授に一切の著作権料を払っていなかった。教授本人は自分の論文をダウンロードするのにも金を払わなくてはならなかった。作者の同意なしに、第三者がその著作物の著作権を勝手に主張、利用していた点は、戴さんのケースと共通する。ちなみに趙教授は裁判で勝訴し、70万元(約1406万円)余りの賠償を得て、論文は全てデータバンクから削除された。
これらを通じて得るべき教訓は、本当の意味で知的財産の保護とその権利意識を高める必要があるということだ。他人の知的創造による作品を尊重し、もし著作物を使用する場合には出所が不明のものを安易に使用するのではなく、正式なルートで正当な対価を払うべきなのだ。出所の曖昧なものを使用すれば、結果として本来の著作権者の権利を侵害することにもなりかねない。誰もが容易に情報発信できる現代においては、誰もが自分ごととして真剣に考えたいところである。(c)東方新報/AFPBB News