【8月22日 東方新報】今年、晴れて大学に入学した中国・四川省(Sichuan)宜賓市(Yibin)の男子学生は、ネットで夏休みのバイトの募集を見つけた。仕事は郊外の物流センターに住み込み、宅配便の仕分けや発送。時給15元(約300円)で午前2時から翌日の午後1時までの11時間勤務。週5日で給料は週払い。1日10元(約200円)の光熱費を払う必要はあるが、宿泊費と食費はタダ。

 これならば一週間で800元(約1万6041円)ぐらいになる。お金を稼げる上、仕事も経験できる。彼は同級生5人と募集に応じた。

 ところが現実は約束とは全く違った。

 最初の一週間を終えて給料を受け取ったところ、手にした報酬は100元(約2005円)あまりだった。当初の計算では800元ほどになるはずだった。

「10元だったはずの光熱費が、保険や食費やらで合わせて200元(約4010円)も引かれていました。実際は何の保険もないのに。それに、5日働いたのにタイムカードがカウントされたのは3日分だけでした。そもそも誰もタイムカードを押す必要なんて教えてくれませんでした。勤務時間は11時間ではなく、食事や休憩時間2時間が差し引かれていました」

 夏のバイトは、小遣いを稼げるだけではなく、新しい出会いや体験も期待できる。本来は楽しい経験であってしかるべきだが、中国ではトラブルが相次いでいる。仲介業者を介してバイトを見つけたという別の学生はこんな経験をした。

「仲介の人は最初、時給16元(約320円)と言っていました。派遣された工場との契約は時給12元(約240円)でしたが、差額の4元(約80円)は補填(ほてん)してくれると言っていました」

 学生の契約期間は8月10日までだったが、工場の方ではたくさんのバイトは7月30日で仕事が打ち切られてしまった。仲介業者は「契約期間を全うしていない」という理由で約束したはずの補填部分を払ってくれず、その後は連絡が取れなくなってしまった。

 夏のバイトトラブルの原因はさまざまだが、残念ながらブラックな仲介業者が横行している点は否定できない。トラブルが相次ぐ原因について北京市の陳紅煒(Chen Hongwei)弁護士は「違法な仲介業者は正式な手続きを経ていないだけに、監督や処罰が難しい」とした上で、学生にとって権利擁護のコストが高くついてしまう点も指摘する。

「(学生が被害にあった場合には)労働監督部門に行かなければなりません。そして裁判所で訴訟という正式なルートになれば、長い時間がかかり証拠も要求されます」

 求人広告では高額な報酬を謳(うた)いながら、実際は違うということもある。そんなトラブルを避けるためにも郭楊(Guo Yang)弁護士は、労務契約を結ぶ重要性を指摘する。

「労務契約がなければ、夏休みの労働者と雇用者の間に労務関係があることを証明することが難しくなります。求人広告は一般的に企業の約束として認められず、労務関係があるとも認められません。双方の権利と義務は労働契約を基準にしなければならないので、できるだけ労働契約を締結し、求人広告と契約内容が一致しているかどうかを注意しなければなりません」

 最近は動画サイトやインフルエンサーを通じた求人も登場し目を引くが、アクセス数目当てに実際とは違う高待遇を謳ったものなども存在する。古今東西を問わず、ウマイ話には注意が必要だ。(c)東方新報/AFPBB News