【9月16日 AFP】米カリフォルニア州では、キャンピングカーやトレーラーハウスはかつては気ままな海辺の生活の象徴だった。だが近年は、住宅危機やホームレスの増加といった社会問題を映す鏡となっている。

 カリフォルニア州には富裕層が多いが、全米のホームレスの約3分の1も同州に集中している。ロサンゼルスのホームレス対策局(LAHSA)の統計によると、ロサンゼルス郡だけでホームレスは7万5000人以上に上る。

 詳細な数字は不明だが、同じデータによると、ロサンゼルスや近隣の町では、キャンピングカーやトレーラーハウス、乗用車を生活の場とする人の数がどんどん増えている。

 観光客でにぎわうベニス(Venice)のビーチ近くに止めたキャンピングカーを指さし、「これ以上は払えなかった」と、ボー・ビアードさんは話す。刑事施設に収容され、すべてを失ってしまったという。

 一からやり直そうと、8年前に州外から転居してきたが、思ったようにはいかなかった。

 ロサンゼルスの6月の平均家賃は2950ドル(約43万円)に達した。

 住宅費の高騰問題に直面しているのはカリフォルニア州だけではない。ホームレス問題に取り組む全国連盟「National Alliance to End Homelessness」によると、米国では2021年に700万人以上が、収入の半分以上を住宅費に費やした。2007年に比べ、25%も増えた。

 ビアードさんが抱えるのは家賃問題だけではない。「仕事もない」と言う。57歳という年齢では、再就職も難しいと嘆く。

 2020年にパートナーの女性が妊娠したため、家族で暮らせるようにとキャンピングカーを購入した。だが子どもは生まれて間もなく、市の当局者に連れて行かれた。キャンピングカーでの生活は子育てには不適切で、保護が必要と判断されたためだ。

「人生最悪の経験だった」と振り返った。

 結果的に子どもを取り上げられる一因となってしまったキャンピングカーだが、別の形でも試練をもたらした。住む場所があるとの理由から、低所得者向け住宅補助制度の利用が難しくなったのだ。

 ビアードさんは、制度の適用候補としては順番は最後尾だと言う。「私たちはホームレスではないとの見方をされてしまうが、私たちはホームレスです」と訴えた。