【5月25日 東方新報】中国で5月20日は、日本のバレンタインデーなどとは比べものにならないほどロマンチックな日。なぜかというと、中国語で「520(Wu Er Ling)」の発音が、「私はあなたを愛しています」という意味の「我愛你(Wo Ai Ni)」の響きと似ているからだ。毎年、そのロマンチックな日を結婚記念日にしようと5月20日に婚姻届を提出するカップルが多い。今年の5月20日は土曜日に当たったので、各地の役所の担当部門は休日返上で手続きにあたり、門出を迎えたカップルを祝福した。

 首都北京市ではこの日、合わせて5100組以上のカップルが婚姻登録したという。北京中心部の東城区(Dongcheng)の婚姻登記事務センターでは、始業の午前8時前に順番待ちのカップルの行列ができた。記念日をしっかり記録しようと、わざわざプロのカメラマンを連れて来たカップルもいた。他にも、花束を抱えて来たりウエディングドレスをまとったりと華やかさを添える演出は用意周到だ。

 東城区では今年、新たなサービスを用意した。婚姻登録の終わったカップルは、お相手に対するメッセージを録音、ディスクに保存してもらえる。1年後、3年後、5年後、10年後といった記念日に、この日に録音された相手のメッセージを聞けるのだという。メッセージのタイムカプセルだ。

「1周年にはけんかばかりしているかもしれません。でも新鮮な気持ちは失われていないよう望みます」

「10年後にはきっと小さな家族の形ができているでしょう。その後も、何度も10年を迎えられるよう希望します」

 愛と希望にあふれたすてきな思いがたくさん録音されたことだろう。

 このように、社会全体で結婚を後押ししようというムードの背景には、中国が抱える少子化や晩婚化という課題がある。晩婚化の理由の一つは、男性側が結婚と同時にマイホームを用意しなくてはいけないなどコストがかかりすぎること。高額すぎる結納金の問題もしばしば指摘される。

「お互いの家族が結納金について何度も話し合い、最終的にこの金額で確定しました」

 5月20日にゴールインしたこの女性、結納金は10万元(約198万円)余りだったという。

 中国政府のシンクタンク・国務院発展研究センターの李佐軍(Li Zuojun)氏のビッグデータを用いた分析によると、2000年以降の結婚の約8割で結納金が交わされ、結納の平均額は約7万元(約138万円)という。また、結納をめぐり4割以上の家庭で何らかの問題が生じていたともいう。

 こうした現実を反映して、地方などで結納金の上限額を設けようとする動きも出ている。例えば、江西省(Jiangxi)の通知では農民の可処分所得の3倍を上限の目安とし、それを超える場合は高額結納とみなすとしている。3万元(約59万円)、10万元といった金額で上限の目安を決める地域もある。

 こうした問題を一つ一つクリアし、5月20日を笑顔で迎えた新婚カップル。結婚生活は必ずしも平穏ではないかもしれないが、二人で手を携えながら、山を乗り越え谷を乗り越えてほしい。(c)東方新報/AFPBB News