【5月23日 東方新報】中国南部の広東省(Guangdong)や海南省(Hainan)などでライチの収穫・出荷シーズンが始まった。グリーンライチの「妃子笑(ひししょう)」をはじめ、日本などへの輸出も行われている。

 ライチは、中国では紀元前に栽培されていた記録のある歴史の古いフルーツ。中国南部からベトナム北部が原産とされ、中国だけで品種は200に上る。そしてライチと言えば8世紀、唐の時代の皇妃だった楊貴妃の好物として有名だ。

 楊貴妃を寵愛(ちょうあい)していた皇帝・玄宗は、産地の南部から都の長安(現在の西安市<(Xi’an)>)まで約1500キロの道のりを騎馬に走らせ、ライチを取り寄せた。「ライチは枝を離れると1日で色が変わり、2日で香りが変わり、3日で味が変わってしまう」と言われるほど劣化が激しい。そのため昼夜を問わず、人馬ともに命がけでライチの大陸縦断リレーをさせられた。

 唐朝末期の詩人・杜牧(Du Mu)は「一騎紅塵妃子笑 無人知是荔枝来(砂煙を巻き上げ到着する馬 楊貴妃は笑みを浮かべて歓迎する それがライチの到着とは 誰も知らない)」としたためている。これが現在のグリーンライチの名前「妃子笑」の由来となっている。

 歴史の古いライチは、樹齢によって価格も異なる。世界一のライチ生産地・広東省茂名市(Maoming)では、樹齢50~99年のライチは500グラム当たり99元(1951円)であるのに対して、1000年を超えると2888元(約5万6914円)にはね上がる。樹齢が長いほどすっきりとした甘みが増し、予約が殺到してあっという間に売りきれるという。

 茂名市では大手運送業者と提携し、保冷トラックやチャーター便を使い、鮮度を徹底して維持するコールドチェーンを確立し、ビッグデータにより輸送効率も向上させ、日本や米国、カナダなどに輸出している。かつての玄宗皇帝は楊貴妃を溺愛しすぎ、政治をおろそかにして国を傾けたといわれる。人馬の犠牲もなく、現代のように果汁たっぷりの乳白色のライチが新鮮なまま手に入れば、歴史も変わっていたかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News