【4月27日 東方新報】インターネットの発達に伴い、人びとは現実とバーチャルの二重空間で生活している。中国ではZ世代(1995年以降生まれ)の若者の間で、「もし自分が突然、死亡した場合、ネット上のデータをどうするか」が話題となっている。

「自分が撮った写真は全部、スマホの中にあります。クラウドで保存していますが、親の世代のように写真を1枚ずつ貼ったアルバムもない」。そう話すのは、大学生の楊(Yang)さん。「考えてみれば、私の記録はすべてネット空間にありますね」。

 中国ではツイッター(Twitter)やライン(LINE)、インスタグラム(Instagram)のようなSNSが独自に発達している。自分の意見や出来事をつぶやく「微博(ウェイボー、Weibo)」、友人とチャットを楽しむ「騰訊(テンセント、Tencent)」「映える」映像を投稿する「小紅書(Red)」、ショート動画を投稿する「抖音(Douyin)」(海外版がティックトック<TikTok>)…。楊さんの友人も多かれ少なかれ、これらのSNSが生活に必須となっている。

 楊さんはさらに、「中国版ニコニコ動画」と言われる動画共有サイト「ビリビリ動画(bilibili)」に趣味でアニメの二次動画を投稿している。仮に今、自分が不慮の死を遂げた場合、これらネット上のデータをどうするか。「自分の存在を忘れられたくないから保存してほしい。墓石にQRコードを貼り付けて、清明節(日本のお盆に相当)に墓参りに来る人に、私のことを思い出してほしいですね」。楊さんは明るく話す。

 各プラットフォームはすでに、ユーザーが亡くなった場合の対応を取っている。

 微博は2020年に「故人アカウントの保護に関する留意事項」という方針を発表した。ユーザーの死亡を確認した場合、追悼の意味を込めてアカウントをそのまま保存。家族ら正規の相続人はアカウントにアクセスできるが、新たな投稿や削除、ステータスの変更はできないようにしている。ビリビリも同年、亡くなった人のアカウントを残す「メモリアルアカウント」機能を導入している。

 一方で、誰しもが「見られたくないデータ」もしくは「身内に知られたくないデータ」も存在する。匿名でSNSに投稿している20代の会社員、李(Li)さんは「SNS上の自分は『もう一つのキャラ』として投稿している。内容は残したいが、家族には知られたくない。私の陰暗面(暗黒面)をさらして、リアル世界でのキャラを死後でも崩壊させたくない」と打ち明ける。自分に万一の事態が起きた場合を想定し、親友にだけ自分のアカウントを伝え、死後の管理を頼んでいるという。

 微博が以前行ったアンケートでは、「亡くなった仲の良い友人のアカウントを残したいか」という質問には79%が「残したい」と答えている一方、「あなたの死後、家族にプライバシーを見せてもいいか」という問いには83%が「見せたくない」と回答している。これらは、リアルとバーチャルの二つの空間を生きる現代人にとって共通の傾向と言えそうだ。(c)東方新報/AFPBB News