【5月14日 AFP】ワールドアスレティックス(World Athletics、世界陸連)が3月に発表した、トランスジェンダー選手の女子の部への参加を禁止する決定は、陸上以外のスポーツにも広く影響するとみられる。

 ここでは、ジェンダーに関する議論の中心に置かれてきた5人の選手を紹介する。

■キャスター・セメンヤ(陸上)

 五輪で2度、世界陸上(World Athletics Championships)で3度、陸上女子800メートルで優勝しているキャスター・セメンヤ(Caster Semenya、南アフリカ)は、テストステロン値が高い「アンドロゲン過剰症」であることを理由に、さまざまな議論を呼んだ。

 まだ18歳だったセメンヤが2009年の世界陸上ベルリン大会で優勝すると、彼女の存在は議論を巻き起こし、当時の国際陸上競技連盟(IAAF、現ワールドアスレティックス)は2011年、高アンドロゲン症の選手はテストステロン値が一般的な男子を下回る場合に限り大会に出場できるという規定を定めた。さらに2018年には、400メートルから1マイル走を対象とし、テストステロン値を下げる投薬治療を義務づけた。

 南アフリカ側は、こうした動きに猛反発。セメンヤ本人は、自身を「遅く」しようとしていると訴えて法廷闘争に持ち込んだが敗れ、2019年の世界陸上ドーハ大会は欠場を強いられた。200メートルでの出場を目指した東京五輪では予選会を突破できず、5000メートルで出場した昨年の世界陸上オレゴン大会でも、決勝に勝ち残れなかった。

■ローレル・ハバード(重量挙げ)

 2021年8月、ニュージーランドの重量挙げ選手ローレル・ハバード(Laurel Hubbard)は東京五輪に43歳で参加し、トランスジェンダーとして史上初の五輪出場を果たした。

 ハバードは少なくとも1年にわたり、血中テストステロン値の五輪参加基準を満たしていたが、出場には大きな批判が集まった。大会後の2021年末、国際オリンピック委員会(IOC)は、トランスジェンダーや「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」の選手の参加基準に関する統一のガイドライン策定を断念し、各競技の統括団体に判断を委ねることを発表した。