【3月20日 東方新報】野球の世界一を決める大会・第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本国内が沸いている。その侍ジャパンと同じ1次ラウンド・プールBで戦った中国代表は4戦全敗に終わったが、日本での戦いに手応えを感じていた。

 中国ではサッカーや卓球、バスケなどの人気が高く、野球はきわめてマイナーな存在だ。2002年にはプロ野球リーグが誕生しているが、経済的な理由などからシーズンが中断したり試合数が削減されたりなど不安定な運営が続いている。WBCは2006年の第1回大会から毎回出場し、第4回までの通算成績は通算2勝10敗。世界ランキングは今回のWBC出場国の中では最も低い30位だ。

 日本対中国戦が行われる前、試合に関心を持つ中国メディアは「日本はWBCで2回優勝しており、今回は特に世界一のプレーヤー・大谷翔平(Shohei Ohtani)選手をはじめとしたオールスター軍団がそろっている」と紹介。「実力懸珠的対決(実力の懸け離れた対決)」「中国が勝つ確率は、サッカーで中国代表がブラジルに勝つ確率より低い」などと「正直」な予想を伝えている。

 3月9日に東京ドーム(Tokyo Dome)で行われた対日本戦では、大谷投手の前に打線が沈黙。0対3とリードされて迎えた6回表、戸郷翔征 (Shosei Togo)投手から中国の1番打者の梁培(Liang Pei)外野手がホームランを放った。

 24歳の梁培選手は両親とも中国人だが、生まれも育ちも日本。高校時代は東海大学菅生高等学校(Tokai University Sugao Senior High School、東京)で甲子園を目指した。卒業後は母親の勧めもあって中国の北京タイガースに入団。「母国でプロ選手となり、代表となって国際舞台に立つ」ことを夢見た。2019年にはシーズン優勝に貢献し、トッププレーヤーに仲間入りした。目標としてきたWBCでホームランを放ち、自身のSNSに祝福のメッセージが集まると、試合後には「みんなありがとう。泣けてくる」と感謝の言葉を書き込んだ。

 中国代表では、捕手の陸昀(Liu Yun)選手も日本との関係が深い。中国で生まれ、両親の仕事で小学生の時に来日し、野球に取り組んだ。三重県の四日市大学(Yokkaichi University)卒業後、北京タイガースに入団。梁選手と同じく優勝に貢献した。

「スマホでいつも大谷選手のプレーを見ている」という陸選手は「日本代表からホームランを打つ夢を見た」というほどWBCでの対戦を熱望していたが、直前に手を骨折するアクシデントに見舞われた。それでも他のメンバーを絶えず励まし続け、王偉(Wang Wei)コーチは「陸昀はグランドにいなくとも、いつも声を張り上げ、私たちを結束させてくれた」と感謝する。

 中国代表は対日本戦で中盤まではロースコアで善戦し、最後は1対8で敗戦した。中国としては翌10日昼に行われた第2戦のチェコでの勝利をもくろんでいたが、日本戦のナイトゲームから15時間後にプレーボール。こうしたスケジュールに慣れていない中国代表は疲労感も見られ、8回まで5対4でリードしながら、9回表に逆転を許して連敗した。その後、オーストラリアには2対12、韓国には2対22の大差で敗れ、WBCを終えた。

 それでも、元中国代表の徐錚(Xu Zheng)氏は「時速160キロのボールを生で見るなど、選手たちはこの大会でしか味わえない体験をした。中国に戻った後も、成長するモチベーションを保つことができる」と意義を語る。

 中国代表選手30人の中には、昨年までソフトバンクでプレーした真砂勇介(Yusuke Masago)選手、米ロサンゼルス・エンゼルス(Los Angeles Angels)傘下のアラン・チャン・カーター(Alan Zhang Carter)選手、韓国KTウィズ(KT Wiz)の朱権(Zhu Quan)選手、元米国マイナー所属のレイ・チャン(Ray Chang)選手ら、中国にルーツを持つ4人の非中国籍選手も参加した。監督は米国でコーチ経験の長い75歳の老将、ディーン・リロイ(Dean Leory)氏が指揮した。

 これまでの野球経験が異なるメンバーと共に戦ったことは、平均年齢24歳という若き中国代表たちの大きな財産となるだろう。梁培選手は帰国後、ツイッター(Twitter)で「悔しい結果になりましたが中国野球まだまだこんなもんじゃない。絶対にリベンジしに帰ってきたいと思っています」と日本語でつづっている。(c)東方新報/AFPBB News