【1月10日 東方新報】サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会(2022 World Cup)では日本代表の奮闘ぶりに同じアジア人として喝采送った中国人も多かった。日本では代表チームの凱旋(がいせん)帰国とともにすっかりクールダウンした感があるが、自国代表のW杯出場を夢みる中国では、官民上げてサッカーを盛り上げようという機運にむしろ拍車がかかったかもしれない。

 四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)の空に「頑張れ成都!」の大合唱とサポーターの吹くラッパの音が鳴り響いたのは昨年の大みそか。地元プロサッカーチーム成都蓉城(Chengdu Rongcheng)の1年最後の試合は、遼寧省(Liaoning)大連市(Dalian)のチーム大連人(Dalian Pro)とホームでの対戦となった。会場の鳳凰山サッカースタジアムに詰めかけたサポーターは約3万8000人。観客席には成都蓉城のチームカラーの赤い大きな旗が何枚もはためいた。結果は3対0で成都蓉城が見事快勝した。

 12月下旬になり鳳凰山サッカースタジアムはとにかく熱気に包まれた。成都蓉城が昨年1月、中国プロサッカーの1部リーグであるスーパーリーグに昇格すると、地元ではたちまち「鳳凰山にサッカーを見に行こう」が流行語となった。しかし、現実にはゼロコロナ政策の厳しい行動制限が続いており、サポーターがホームで応援する機会には恵まれなかった。

 ところが12月に入り中国政府はコロナ規制を大きく緩和。同スタジアムでは12月下旬に成都蓉城が出場する3試合組まれた。成都蓉城はその3試合にいずれも勝利し、スーパーリーグで5位の好成績。大みそかの大連人との試合は、2万枚近いネット販売分のチケットは1時間余りで完売するほどの人気。この間、スタジアムへのアクセスに便利な地下鉄はさながらサポーター専用列車だったそうだ。

 成都サポーターの熱狂ぶりに、翌年以降の中国サッカーの盛り上がりを予感させると感じたと人も多かったかもしれない。

 成都はもともとサッカーが盛んな都市。学生サッカーの試合が市内で毎年4000以上開催され、1200以上のチームが参加するという。

 その上、成都は昨年1月、国家体育総局によるサッカー振興を目指す重点都市の一つに指定された。ちなみに同時に指定されたのは上海、武漢市(Wuhan)、深セン市(Shenzhen)、広州市(Guangzhou)、長春市(Changchun)、重慶市(Chongqing)、大連市(Dalian)、青島市(Qingdao)で成都市を含め計9都市。

 成都では今後、サッカーを含めたスポーツ関連産業の振興に力を入れる方針で、2025年までに1500億元(約2兆9225億円)、2035年までに5000億元(約9兆7416億円)を超える規模を目指す。

 サッカー振興の重点都市の一つ重慶市でも観客6万人を収容できる重慶龍興サッカー場が昨年完成した。総建築面積は16万平方メートル以上、回転と上昇をイメージさせるデザインで、サッカー専用スタジアムとしては同市で初めてという。

 また青島市でも国際Aマッチの会場基準に合う青島青春サッカースタジアムが間も無く完成する。5万人が収容できるというこちらも巨大スタジアムだ。

 官民上げてサッカーをもり立てる中国が、ワールドカップに代表を送り込む日も近いかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News