【2月22日 東方新報】中国で急速に広まっているeスポーツ。プレーヤー人口は5億人に達し、市場規模は1000億元(約1兆9597億円)を超える。そうした流行を反映して、中国各地に宿泊しながらゲームを楽しめる「eスポーツホテル」が次々と誕生している。ハイスペックのゲーム機器や大型ディスプレー画面でゲームに没頭できるとして人気となっている。

 eスポーツホテルは2017年ごろに誕生したばかりだが、ホテル業界団体の中国旅遊飯店業協会とオンライン旅行大手の同程旅行(LY.COM)が発表した「2022年eスポーツホテル市場リポート」によると、2021年には1万5000店を数え、2023年には2万店を超える可能性があるという。

 eスポーツホテルの利用客層は、デジタルネーティブ世代の1990年代生まれが主流で、男性が9割近い。主にビジネスホテルのチェーン業界が力を入れており、ホテルの部屋代は67.4%が1泊当たり250元(約4899円)以下と比較的手頃な価格だ。eスポーツホテルは2020年に新型コロナウイルスが流行して以降に増加しており、旅行や出張によるホテル利用者が激減した「穴」を埋める役割も担っている。

 また、コロナ禍で街角のネットカフェが次々と閉店しており、eスポーツホテルはゲーム愛好家にとって、広々とした環境で思いきりゲームを楽しめる空間にもなっている。中国のゲーム最大手、騰訊(テンセント、Tencent)もeスポーツホテルとの提携を進めている。

 今後はeスポーツホテル業界内の競争が激しくなり、中国の若者に人気の「脱出ゲーム」や架空の殺人事件で犯人を捜す体験型ゲーム「劇本殺(マーダーミステリー)」も取り入れたホテルが登場すると言われている。

 一方で、「eスポーツホテルを未成年が利用している」という問題も浮上している。中国では18歳未満はインターネットカフェを利用できない。eスポーツホテルはネットカフェと同じ業態と考えれば、違法行為にあたる可能性がある。

 浙江省(Zhejiang)人民代表大会(議会に相当)ではエンジニアで人民代表の王超軍(Wang Chaojun)氏が「eスポーツホテルの利用に明確な年齢制限がないのは、法的な『抜け穴』行為だ。未成年の宿泊を認めず、ホテル側の管理責任を明確にすべきだ」と提案している。江蘇省(Jiangsu)宿遷市(Suqian)の人民検察院は昨年、市内のeスポーツホテルが未成年を宿泊させているとして、民事公益訴訟を提起した。民事公益訴訟とは、社会で共通する利益が侵害された場合に関連する団体が提訴できる仕組みで、該当団体がない場合は検察が提訴できる。

 中国では2008年にeスポーツを「公式スポーツ」に認定し、新たな産業として育成に努めてきた。今年9月に杭州市(Hangzhou)で開催されるアジア競技大会では、eスポーツが初めて正式種目として採用される。一方で若者のゲーム中毒も問題視され、中国政府は2021年、未成年者のゲーム時間を「金土日、祝日の午後8~9時の1時間のみ」とする「ゲーム制限令」を発表。18歳未満がeスポーツ大会に出場することも禁止している。eスポーツホテルを巡る議論も、アクセル(促進)とブレーキ(制約)を同時に踏むようなeスポーツへの対応を象徴していると言えそうだ。(c)東方新報/AFPBB News