【12月31日 AFP】ロシアによるウクライナ侵攻の苦難を乗り越え、「ウクライナ国立バレエ(National Opera Ballet of Ukraine)」が仏パリ公演を行っている。

 ウクライナの首都キーウを本拠とする同バレエ団は2月の侵攻開始以降、空爆でたびたび公演中断の憂き目に遭ってきた。

 だが、ショービジネスの世界では「ショー・マスト・ゴー・オン」が鉄則。幕が上がれば最後までショーを続けなければならない。そうした状況にバレエ団のメンバーも観客も慣らされてきた。

 キーウではロシア軍の空爆が日常化しており、史跡「黄金の門(Golden Gate)」に近いウクライナ国立歌劇場(National Opera of Ukraine)でも、空爆があるたびに観客は防空壕(ごう)への避難を余儀なくされている。

 ダンサーも観客に交じって避難するが、1時間以上公演が中断することもある。その間、体の柔軟性を保っておかなければならない。

「警報が解除されたら、すぐに公演を再開できるようにしておかなければなりません」とプリマバレリーナのナタリア・マツァーク(Natalia Matsak)さん。「とても消耗します(中略)アーティストとしての力が試されます」

 家に帰っても緊張は解けない。「砲撃を受けた後は夜も眠れません。神経が疲れ切っているんです」

■減っていったダンサー

 侵攻開始後、数百万のウクライナ人が避難し、ウクライナ国立バレエからも大勢のダンサーが国外に逃れた。

「多くの女性ダンサーが去り、バレエ団の構成がすっかり変わってしまいました」と、ソリストのセルヒー・クリウォコン(Sergiy Kryvokon)さんは語る。

 男性ダンサーのオレクサンドル・シャポワル(Oleksandr Shapoval)さんは侵攻開始の翌日、10代の娘2人を残し、志願兵として戦地に赴いた。 そして9月、東部ドンバス(Donbas)地方で迫撃砲による攻撃を受け、命を落とした。