【5月3日 AFP】ロシア・モスクワのボリショイ劇場(Bolshoi Theatre)は1日夜、ウクライナ侵攻を批判していたロシア人映画監督・舞台演出家のキリル・セレブレニコフ(Kirill Serebrennikov)氏(52)らが演出するバレエの舞台を中止すると発表した。

 ボリショイによると、今週3回公演が予定されていたセレブレニコフ氏演出の「ヌレエフ(Nureev)」に代わり、4月にも公演されたアラム・ハチャトゥリアン(Aram Khachaturian)作曲の「スパルタクス(Spartacus)」が上演される。

「ヌレエフ」は、バレエ界のスーパースターだったロシア人ダンサー、ルドルフ・ヌレエフ(Rudolf Nureyev)の人生を描いた作品。裸の場面や冒涜(ぼうとく)的なせりふがあるため、ロシア保守層から批判を浴びていた。

 劇場側は中止の理由を明かしていない。広報担当者は2日、AFPに対し、「公式」なコメントはないと話した。

 セレブレニコフ氏は2020年、モスクワの劇場ゴーゴリ・センター(Gogol Centre)の資金を着服したとして有罪とされた。同氏の支援者らは、ロシア政府の独裁主義と同性愛者嫌悪を批判したことへの報復だと主張している。

 今年3月に出国が許され、現在は独ベルリンを拠点としている。セレブレニコフ氏は、AFPの取材に書面で回答し、ボリショイ劇場が公演を中止したことは驚きではないと述べた。

「この作品は、ある男が自由を勝ち取る物語だ。創造する自由や生きる自由を」「今や『ヌレエフ』はボリショイの舞台にとっては不適切で(上演が)不可能なものとなった。不必要に関連づけられたり、出演者に気まずい思いをさせたりするのを恐れている」

 同氏はさらに、公演の中止は旧ソ連時代へと戻るものだと非難する。「欧州でロシア文化が排除されているって? ロシア国内では、ロシアが自ら文化を排除しているではないか」

 セレブレニコフ氏の他、ティモフィ・クリャビン(Timofey Kulyabin)氏(37)が演出した舞台も中止になり、代替公演が行われる。

 クリャビン氏も、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領のウクライナ侵攻の決定に反対していた。同氏も現在、欧州を拠点にしているとみられる。(c)AFP