【11月1日 AFP】「そこにあるのは恐怖だ。地面はアスファルトのように真っ黒で、すべてが破壊された。遺体があちこちに散乱していた」

 AFPの取材に応じたウクライナ兵のエウヘンさん(38)は、ロシア軍が撃ち込む砲弾が付近でさく裂する中、地下トンネルに退避した。そして、わずか1キロしか離れていない東部ドネツク(Donetsk)州バフムート(Bakhmut)の前線の状況を振り返った。

 ロシア軍はウクライナ各地で防戦を強いられているが、バフムートに対しては過去数か月間、攻撃の手を緩めていない。

 軍事専門家やウクライナ軍によると、暗躍しているのはロシアの民間軍事企業ワグネル(Wagner)だ。

 ワグネルの創設者は、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に近い実業家のエフゲニー・プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏(61)。ロシアによるウクライナ侵攻を機に存在感を強めており、政治的野心を抱いている可能性があるとの見方も出ている。

 ウクライナ当局者によると、プリゴジン氏はロシア国内の受刑者に対し、報酬や恩赦という条件を提示してワグネルの兵士として採用し、数千人を前線に送っているという。

 数人のウクライナ兵は、こうした元受刑者が「人間の餌」のような使われ方をしているとAFPに証言した。

 ウクライナ軍第93旅団に属するアントンさん(50)は、「暗くなる午後6時前後から、経験のない兵士たちがわれわれの陣地に向けて前進を命じられ、ある地点で数分間とどまる」と説明する。こうした兵士が毎晩7、8人前後、ウクライナ部隊に向かってやって来るという。

 第53旅団の少佐セルヒーさんは、「一行の任務は、前進してわれわれが発砲せざるを得ない状況を生み出し、陣地の場所を探り当てることだ」と話す。その後、「ロシア側は(われわれの陣地に向けて)大砲を撃ち込み、より経験豊富な精鋭部隊を送り込んでくる」という。