【9月2日 AFP】ベラルーシからウクライナに政治亡命してきたカリーナ・パチョムキナさん(31)は2月初旬、首都キーウ北郊の緑豊かなブチャ(Bucha)のアパートに居を定め、これで危険から逃れられたと安堵(あんど)した。

 反政府的なネット投稿を理由に逮捕されそうになり、6週間前にベラルーシを脱出。すでに複数の友人が刑務所に収容されていた。強権的な指導者が20年以上にわたり支配を続ける祖国と比べ、ウクライナは「100倍民主的」な国で、居心地が良かった。

 ところが、引っ越してから2週間もたたない2月24日、ロシアがウクライナに侵攻。ベラルーシは攻撃の経由地となった。

 パチョムキナさんはもちろん、ウクライナに暮らすベラルーシ人やロシア人は、恐怖におののきながらそれを見ていた。ウクライナを支援した人も多い。しかし今、彼らは国外退去の可能性に直面している。

 3月にブチャでの戦闘が激化し、パチョムキナさんは避難を余儀なくされた。ガスと電気が止まった3月8日、同居人と共に西部リビウ(Lviv)へ向かった。通常なら1時間程度の道のりに、48時間かかった。

 ブチャはその後、ロシア軍の占領部隊による戦争犯罪疑惑で世界中に知られるようになる。町が解放され、大量虐殺の証拠が出たと聞くや、パチョムキナさんは急いで帰還し、心理支援センターと赤十字(Red Cross)のボランティア活動に励んだ。

 ブチャの役場は6月、パチョムキナさんに感謝状を贈った。

 だが、数日後、ちょうど期限が切れた滞在許可の更新申請のため移民局を訪れると、パスポートを没収された。パスポートは、10日以内に出国しなければ国外退去処分とすると通告するスタンプを押されて返却された。