【5月3日 AFP】ウクライナ侵攻はロシアの自滅行為──ロシア人映画監督・舞台演出家のキリル・セレブレニコフ(Kirill Serebrennikov)氏(52)は、移住先のドイツ・ベルリンでAFPのインタビューに応じた。ロシア国内で侵攻が支持されているのは「長年のひどいプロパガンダ」の結果だと語った。

 セレブレニコフ氏は、ユダヤ人の父とウクライナ人の母の間に生まれた。ウクライナ侵攻については「恐怖、悲しみ、恥、痛み」を感じると話す。

「私はロシアを愛している。ロシアの人々も愛している。彼らは実際は平和的だ」と指摘。「私が読んだり、見たりしたことから、この恐ろしい分断と、殺りくを支持している人も多いことも知っている。まるで自滅だ」と強調した。

「文化と戦争は相反するもので、文化人は戦争の一部、戦争の犬にはなれない」と語った。だが、アーティストが戦争反対の声を上げようとするとジレンマに直面することも多いという。

 セレブレニコフ氏は「たとえば、明日か明後日、何らかの発言をしたら、すぐに警察が来て逮捕される状況を想像してみてほしい。どうすべきだろうか?」と問いかける。「みんな、家族がいて、ビジネスや仕事があって、生きるためには稼がなければならない」

「恐怖、あらゆる前例や制限、逮捕される圧力があるにもかかわらず、何かを書こうとする勇気あるアーティストがいた」と指摘。主要演劇賞であるロシア・ゴールデンマスク(Golden Mask)の受賞を拒否した「数人の良き演劇人」や、店舗の値札をウクライナ侵攻に関する情報に張り替え、収監された美術家を例に挙げた。

 口をつぐんだり、現政権に積極的に協力したりしているアーティストがいるが、自分の役目は彼らを批判することではないと言う。

 ナチス・ドイツ(Nazi)のプロパガンダ映画の監督を務めたレニ・リーフェンシュタール(Leni Riefenstahl)や、ユダヤ人のドイツからの脱出を支援したマレーネ・ディートリッヒ(Marlene Dietrich)の名を上げこう語った。

「レニ・リーフェンシュタールになりたいならそうすればいい。マレーネ・ディートリッヒになりたいならそうすればいい」

「モスクワに一生暮らし、権力者のために働くことを選択したのなら、それはその人の選択であり、自由にすればいい。彼らを批判しようとは全く思わない」