【3月20日 AFP】18歳のグレブ・グンコ(Gleb Gunko)さんにとって、ウクライナは最初の戦場になる。だが、大義名分は目新しいものではない。ベラルーシ人として自由のために戦うとはどういうことかよく分かっている。

 ポーランドのグルイェツ(Grojec)に住むグンコさんはAFPに「ウクライナのためだけではなく、ベラルーシのためにも戦いに行く」「なぜなら私たちの自由も、ウクライナの状況とこれからそこで起こることに左右されるからだ」と語った。指には「Born free(生まれながらに自由)」の文字が入れ墨で書かれている。

 ベラルーシの首都ミンスク出身のグンコさんは、アレクサンドル・ルカシェンコ(Alexander Lukashenko)大統領による反政権派に対する残忍な弾圧が始まった2020年に国を去った。

 30年近く政権の座にあるルカシェンコ氏は、同年行われた大統領選で勝利宣言をしたが、西側諸国は不正があったと非難。国内では大規模抗議デモが起こった。

 同氏は現在、ロシアによるウクライナ侵攻を支援し、可能にしたと国際的に非難されている。

 ベラルーシとロシアは同盟関係にあるが、ベラルーシ市民はウクライナを支持している人が多い。

 ポーランドの首都ワルシャワに拠点を置く、ベラルーシの人権と民主主義問題に取り組むNGO「ベラルーシ人会財団(Belarusian House Foundation)」は、同国義勇兵のウクライナ行きを支援している。

 財団の施設では、防弾チョッキやモバイルバッテリー、缶詰、薬など義勇兵向けの物資の箱詰め作業が行われていた。

 義勇兵センターを統括するベラルーシ人のパベル・クフタ(Pavel Kukhta)さん(24)は、ルカシェンコ氏とロシアのウラジーミル・プーチン(VladimirPutin)大統領は「全世界にとってテロリストだ」と話す。「これは民主主義と自由対、独裁主義の戦いだ」

 クフタさんは16年から、地雷で負傷する18年まで、ウクライナ東部ドンバス(Donbas)地方で親ロシア派武装勢力と戦っていた。

 兄はベラルーシでの大規模デモに参加し、治安部隊に殺害されたとみられる。

「プーチンがベラルーシを占領すると、あの当時ドンバスにいたみんなが思っていた。だが、ルカシェンコがいたから、まったく戦わずして占領が成立してしまった」と話した。「ルカシェンコはもはや何も決められない。すべてロシアとプーチンを通して決められる」

 ベラルーシ義勇兵は歴史の正しい側にいると信じており、士気は高い。

 ウクライナで長年スノーボード講師の出稼ぎをしてきたアレクセイ・カバルチュク(Alexey Kovalczuk)さん(41)は侵攻開始直後、ウクライナ西部のブコベリ(Bukovel)のスキーリゾートにいて、客の避難を手伝った。

「女性や子どもが泣いていた。涙をぬぐっていた。火の手が上がるのも見た」

 特殊部隊に所属した経験もあるカバルチュクさんは「なぜ民間人を殺せるのか理解できない」と強調した。

 ベラルーシ・ポラツク(Polotsk)から来たアンドレイ・コルサク(Andrei Korsak)さん(53)は、イケア(IKEA)の配達員をしていた。

 ボロボロの白黒の家族写真を見せながら「第2次世界大戦(World War II)で従軍した2人の祖父をウクライナに連れて行く。祖父の一人は1920年にワルシャワを防衛した」と話した。

「100年後に孫が、再びロシア軍を止めるために戦わなければいけなくなっている」

 コルサクさんは誰も殺したくはないとしつつ、「もしその時が来たら、目の前にいる人をミンスクの機動隊員だと思うことにする」「その方が気が楽だ」と話した。(c)AFP/Anna Maria Jakubek