【4月23日 東方新報】中国で空前のペットブームが続いている。「2021年中国ペット消費動向白書」によると、2020年のペット産業の規模は3000億元(約6兆円)近く、2023年には4456億元(約8兆8736億円)に達する見通しだ。

 中国では長年、「ペットはぜいたく」と考えられ、さらに1990年代前半までは狂犬病対策で多くの都市で犬を飼うことは禁止されていた。21世紀に入ると急激な経済成長で人々が豊かになり、2010年ごろからペットを飼う家庭が急増した。統計によると、全国のペット数は2010年の5900万匹から2020年には1億8900万匹と3倍以上増加。このうち都市部で飼われている犬、猫は計1億1000万匹に及ぶ。

 ペットの飼い主は、仕事の忙しい若い独身女性や子どものいない夫婦、子どもが独立した老夫婦などが多い。ペットを飼う理由を尋ねると、「癒やし」と答える人が目立つ。社会が急速に変化して人間関係が希薄化する中、心のすきまを埋める存在となっている。

 若い飼い主の間では、自らを「鏟尿官(Channiaguan)」と呼ぶ人も増えている。直訳すると「おしっこ始末係」。ペットが「ご主人さま」で、「おしっこを喜んで始末させていただく」というほど溺愛している意味だ。自分の暮らしをペットにささげる「資格鏟尿官(ベテランの愛犬家、愛猫家)」を自負する人々のグループチャットでは「私はきょう15元(約298円)のテークアウト弁当を食べたが、うちのワンちゃんは1袋400元(約7965円)のドッグフードを食べている」「かわいいニャンコのためなら、私は土を食べる」といった投稿が相次ぐ。

 ペットフードやスナック、おもちゃ、自動トイレ、セルフ式おふろなど、ペット向け用品の種類は「ベビー用品に匹敵する」と言われている。ペット関連企業は170万社に上る。迷子となった犬、猫やハムスターなどを探すペット探偵や、ペットの健康管理士、ダイエットインストラクターなどの新職業が次々と誕生している。

 陝西省(Shaanxi)西安市(Xi’an)には2016年、ペットの葬儀や遺品の保管をする「ペットライフ記念館」が誕生した。ペットの遺体のお清めや火葬をするほか、館内には生前のペットの写真を飾り、遺灰を入れたつぼを保管。葬祭場と霊園の役割を担い、遺灰を入れたペンダント、腕輪、手工芸品なども制作している。記念館を営む王竜(Wang Long)さんは「人生のパートナーであるペットと別れる飼い主のため、告別と追憶の場を設けたかった」と話す。先祖を供養する清明節だった4月3日、多くの元飼い主が記念館を訪れ、亡きペットを思い出して涙を流し、静かに祈りをささげていた。

 一方でペット業界が急激に成長する中、ニセの血統書で雑種を高額で売り付けるペットショップや、成分に問題があるペットフードを製造するメーカー、ちょっとした病気で高額の医療費を請求する動物病院など「宰客(ぼったくり)」も問題になっている。中国メディアは「ペット業界の統一基準を早急に設けるべきだ」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News