【12月8日 東方新報】中国で「鏟(金へんに産のつくり)尿官(Channiaoguan)」という言葉が定着している。そのまま訳すと「おしっこ始末係」。ペットの犬、猫を溺愛する飼い主たちが自称している。「資格鏟尿官」と言うと、「ベテランの愛犬家、愛猫家」の意味。こうした飼い主たちはペットのことを「毛孩子(毛の生えている子ども)」と呼び、人間の家族同然にみなしている。

 中国ではここ数年、空前のペットブームを迎えている。「中国ペット産業白書」「中国ペット消費動向白書」などによると、2020年でペットの犬・猫は1億匹を超えている。1匹当たりの年間平均消費額は6653元(約11万8339円)。飼い主の平均可処分所得の20%を占める。全国のペット産業の市場規模は2020年で3000億元(約5兆3362億円)近い。中国でペットを飼っている世帯は17%で日本や米国より低く、今後も成長が見込める。2023年の市場規模は4456億元(約7兆9261億円)に達する見通しもある。

 ネット販売大手の京東(JD.com)によると、毎年11月11日を中心に行われる中国最大のネット販売グセール「双11(ダブルイレブン)」で、今年はキャットフードの売上高が前年比486ポイント増、猫用の消臭砂が256ポイント増を記録した。ダブルイレブンを始めた元祖・阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)の「天猫(Tmall)ダブルイレブン」では、セール期間初日の11月1日だけでペット用品の売上高が1億元(約17億7874万円)を超えた。ネット上では「うちのワンちゃんのためにドッグフードや洋服、おもちゃをたくさん買ったわ。あ、2人の子どもには何も買ってなかった!(笑)」というような書き込みもみられる。

 統計によると、ペットの飼い主の8割近くが35歳以下。このうち90後(1990年代生まれ)が4割近くを占め、独身も多い。このため、仕事などで外出するとき用の自動エサやり器や室内のペットの様子が分かるモニタリング機器、ペットの「遊び相手」となる高性能おもちゃ、空気清浄器、遠隔操作できるペット用スマート家電などの需要が高い。京東のダブルイレブンでペット用スマート用品の売り上げは前年比267ポイント増となっている。

 若い独身層は春節(旧正月、Lunar New Year)に帰省し、5月の労働節や10月の国慶節(建国記念日)の連休は旅行に出かける人が多い。都市部にはペットを預けるホテルが次々と設立されている。動物病院やペット用医療保険サービスも急増している。

 企業データによると、中国のペット用品関連企業は2020年までに96万5000社あるが、2021年上半期だけで新規登録企業は31万2400社に達した。参入企業の急増に伴い、さまざまなトラブルも発生している。ペット用給水器の設計に欠陥があり犬や猫が容器に顔を突っ込んで窒息してしまったり、猫用ベッドの中で猫が動き回ると横倒しになってしまったりして、ペットが死亡した例が数件報告されている。このため、統一した安全基準の設定や業界のルール作りが必要という声が高まっている。(c)東方新報/AFPBB News