【2月27日 AFP】「全員! 今すぐ! 早く!」と、道路の向こうから駆け付けながらウクライナ兵が叫ぶ。路上には手りゅう弾や砲弾の破片が散乱している。

 兵士の後方には、枠組みだけが残った黒焦げのウクライナ軍のトラックが見える。首都キエフ北部に軍需品を運ぶ途中で攻撃を受けたのだ。

 兵士の前方では、ハンドバッグを持った高齢女性と中年男性の集団が、たばこを吸いながら、戦況について話している。

 頭上では、キエフに向けて放たれた砲撃砲かロケット弾の音が、不吉なくらい近い距離から聞こえてくる。

 居合わせた人は一斉に走って角を曲がり、コンクリート製の地下室に向かう暗い階段を駆け降りた。

 地下室にはすでに、疲れ切った様子の一団がいた。みんな、あと少しでキエフを脱出できたはずだった。

 ITエンジニアのヘルガ・タラソバ(Helga Tarasova)さん(36)は、「脱出の途中で砲撃が始まった」と語った。タラソバさんは幼い息子を連れ、数人の友人とキエフ駅行きのバスに乗っていた。そこから西部リビウ(Lviv)に向かい、ポーランドに逃れられればと考えていた。

「駅まであと800メートルだったのに」と、膝の上で息子をあやしながら振り返る。警備隊が通してくれなかったという。「かばんを持って走っていたから怪しまれたのかもしれない」

■心配することが心配

 キエフは包囲されている。26日には外出禁止令が出された。路上に人がいればすぐに撃つとされている。

 住民は、むき出しの窓ガラスに目張りし、侵攻してくるロシア軍を混乱させるため、通りの名や番地など目印になりそうな市内の標識を隠し始めた。

 営業を続けているガソリンスタンドは少なく、何十台もの車が列を成している。

 食料品店は閉まっているか、開いていても空の棚をじっと見る人であふれている。パンや普通の肉類、チーズなどは売り切れていることが多い。

 年金受給者のタチアナさんの避難した地下室は、狭い通路でつながれた3部屋に分かれている。黒いワイヤで白熱電球がぶら下がっている。

 ある男性は、数枚の木の板の上にヨガマットを敷いて眠った。横には木製の椅子があり、その上にはバケツが載っている。

 歩き回る男性もいれば、小声で話をする女性もいる。子どもたちは心配事などないかのように遊んでいる。

 妊娠8か月のユリアさん(32)は、心配することが心配だと話す。「早産してしまわないように、できるだけ落ち着こうとしている」と言う。

「夜に1時間以上大きな爆発があった。すべて数日で終わってほしい」 (c)AFP/Dmitry ZAKS