【2月20日 AFP】フランスの高級ファッションブランドはかつて、売れ残った衣類やハンドバッグ、靴を値下げするより廃棄する方を選んでいた。しかし、そんな時代は過ぎ去った。今年初め、売れ残った商品の廃棄を禁止する法律が施行されたのだ。

 各ブランドは現在、在庫を慎重に管理し、売れ残り商品を従業員に割引価格で販売するか、寄付やリサイクルに回している。

 コンサルティング会社「クルツ(Cultz)」で高級ブランド品を専門としているジュリー・エル・グーズィ(Julie El Ghouzzi)氏は、「今や重要な問題になっています」として、英国のブランド「バーバリー(Burberry)」が糾弾された例を挙げた。

 バーバリーは2018年、売れ残っていた2800万ポンド(現在の為替レートで約44億円)相当の商品を前年に焼却処分していたことを明らかにした。同社のトレンチコートなら2万着分が廃棄された計算になる。

 非難にさらされたバーバリーは、売れ残り商品の焼却処分を中止する方針を発表した。

 だが、ラグジュアリー業界に値下げという選択肢はない。「値下げすれば、購買意欲も失わせてしまいます」とエル・グーズィ氏は言う。

■在庫を最低限に

 各高級ブランドは現在、在庫の微調整に努めている。「グッチ(Gucci)」や「イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)」、「バレンシアガ(Balenciaga)」などを傘下に置くケリング(Kering)は、在庫管理を効率化するため人工知能(AI)に投資した。

 世界最大のラグジュアリーグループ、LVMHの環境開発ディレクターを務めるエレーヌ・バラド(Helene Valade)氏は、同グループではビジネスモデルを需要に応じて調整し、各ブランドも在庫を低く抑えていると説明した。LVMHは「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」や「ディオール(Dior)」、「セリーヌ(Celine)」など多数のブランドを傘下に収めている。

 新法に後押しされて、各ブランドは在庫を最低限に減らすため、顧客の購買心理の理解と需要予測の向上に努めるはずだとバラド氏は指摘した。

 あるいは、寄付も選択肢の一つだ。

 LVMHグループは就業支援団体「クラバット・ソリデール(Cravate Solidaire)」と提携している。同団体はスーツやジャケットなどを企業から寄付してもらい、求職中の社会的弱者に提供している。