【1月31日 AFP】英領北アイルランドは30日、カトリック系住民の公民権デモを英治安部隊が弾圧した1972年の「血の日曜日事件(Bloody Sunday)」からちょうど50年を迎えた。カトリック系への不平等撤廃を求めて行進していたデモ参加者13人が射殺されたロンドンデリー(Londonderry)では、数百人が集まって追悼行事が行われ、遺族が法の正義の実現を訴えた。

 1972年1月30日にカトリック系住民が「デリー」と呼ぶロンドンデリーで起きた事件では、後に負傷者1人が死亡し、計14人が犠牲となった。追悼行事では、当時のデモのルートを人々が行進。アイリッシュフルートの調べが響く中、慰霊碑の前で犠牲者の名前が読み上げられた。

 当時のデモ参加者らも歌った公民権運動を象徴する歌「ウィ・シャル・オーバーカム(We Shall Overcome、勝利をわれらに)」の合唱など、音楽や詩もささげられた。

 追悼行事は毎年行われているが、今年は初めてアイルランド首相が出席。ミホル・マーティン(Micheal Martin)首相が慰霊碑に献花した。

 アイルランドのバンド「U2」のボノ(Bono)さんとジ・エッジ(The Edge)さんは、事件を歌った代表作「ブラディ・サンデー(Sunday Bloody Sunday)」のアコースティックバージョンをソーシャルメディアで公開した。

 追悼行事に出席した遺族の一人、マイケル・マッキニー(Michael McKinney)さんは、英政府は裁判で新事実が明らかになるかもしれないことを「恐れている」ため、事件に関与した元英兵の訴追を認めようとしないと批判した。

 英政府は2010年、犠牲者は武器を持っておらず、発砲は命令違反だったと結論付ける報告書を発表し、当時のデービッド・キャメロン(David Cameron)首相が議会で歴史的な謝罪をした。2019年には発砲した英軍の空挺(くうてい)隊員1人が殺人罪で起訴されたが、検察は昨年、有罪判決の見込みが乏しいとして起訴を取り下げた。

 北アイルランドでは今、 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)が新たな緊張をもたらしている。北アイルランドの英国統治存続を望むプロテスタント系住民は、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)政権に対し、ブレグジット後の北アイルランドに適用されている英本土と異なる貿易規則の撤廃を求めている。(c)AFP/Jitendra JOSHI