【7月15日 AFP】英政府は14日、北アイルランド紛争をめぐり、1998年の包括和平合意より前に起きた事件について訴追せず時効扱いとする方針を明らかにした。年内の立法化を目指す。プロテスタント系とカトリック系双方の遺族からは怒りの声が上がっており、アイルランド政府も強く非難している。

 北アイルランドでは、英政府による統治継続を望むプロテスタント系住民(ユニオニスト)とアイルランドとの統一を望むカトリック系住民(ナショナリスト)の間で紛争が起き、1998年の和平合意まで約30年間にわたり暴力の応酬が続いた。「ザ・トラブルズ(The Troubles)」と呼ばれる紛争では、約3500人が犠牲となった。

 英政府が発表した法案は、北アイルランド紛争に関与した英国の治安部隊と準軍事組織の構成員に対し、事実上の恩赦を与えるものだ。

 ブランドン・ルイス(Brandon Lewis)北アイルランド相は、紛争をめぐる数々の訴追が「(北アイルランドの)和解の助けになるどころか、妨げになっている」と指摘し、立法化の必要性を強調。新法は「ザ・トラブルズに関連する全ての事件」に適用されると説明した。

 だが、発表を受け、北アイルランドでは激しい怒りが広がっている。

 1971年にベルファスト西部のバリーマーフィー(Ballymurphy)で起きた暴動で父親を殺害されたジョン・テガート(John Teggart)氏は、英政府が示したのは「戦争犯罪を葬り去ろうとする計画」で「利己的」だと批判した。

 アイルランドのミホル・マーティン(Micheal Martin)首相も、英政府の方針は「非常に多くの理由で間違っている」と明言。「殺人を犯した者に恩赦を与えるなど考えられない。それが国家の関係者であっても、テロ組織や非合法組織の関係者であってもだ」と議会で述べた。(c)AFP/Callum PATON with Joe STENSON in Dublin