【1月20日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領によって深く分断された米国を癒やすため、再び政界へ身を投じ、2020年の大統領選に出馬したジョー・バイデン(Joe Biden)大統領(79)は当初、優しい祖父のような人物だった。だが就任から1年がたったバイデン氏は、いら立ちと怒りをあらわにする闘士へと変貌を遂げた。

 先週の演説では「穏やかでいるのにはうんざりだ」と語気を強めたバイデン氏。自身の目玉政策の一つである投票権法案を成立させるために、上院議員と水面下で何度も実りのない「穏やかな会話」をしたことについて語ったものだが、この1年間のいら立ちを総括した発言だったとも言えるだろう。

 昨年のバイデン氏が穏やかだったならば、今年は声高で好戦的な同氏の姿が見られそうだ。実現が遠のく政策案を救うための時間や忍耐、そして周囲の協力がなくなりつつあるのだ。

 78歳という史上最高齢で米大統領に就任した際、バイデン氏は大きな課題の数々に直面していた。国内では新型コロナウイルスが大流行し、つい2週間前にはトランプ氏の支持者が選挙結果を覆そうとする事件が発生。経済は昏睡(こんすい)状態に陥り、国外では同盟国が「トランプ・ショック」の余波から抜け切れずにいた。

 加えて、警察による身柄拘束で黒人が死亡する問題が相次いだことで、人種差別をめぐる緊張も激化。こうした状況に対するバイデン氏の対処は、有能さや、旧来の良識、そして団結を約束することだった。

 そして、実際にそれを実現するチャンスがあるようにも見えた。与党・民主党は上下両院で僅差ながらも過半数を確保し、トランプ氏はツイッター(Twitter)から追放され、新型ウイルスのワクチンも開発された。

 だが、それから1年。米国は新型ウイルスの変異株「オミクロン株」と「デルタ株」に襲われ、社会の分断はさらに深まり、今年11月の中間選挙では共和党による議会掌握が濃厚。バイデン氏の運は尽きてしまったかのようだ。