【12月23日 CNS】中国西部の甘粛省(Gansu)蘭州市(Lanzhou)で、70代の芸術家・陶世清(Tao Shiqing)さんが中国の古典小説「紅楼夢(Dream of the Red Chamber)」の名場面を大理石に彫刻した。10年以上の歳月をかけて仕上げた場面は30以上。それぞれ長さ1.4メートル、幅50センチの石板に人物の豊かな動き、鮮やかな表情、華麗な背景を表現している。

 大理石を使った彫刻は中国の伝統工芸の一種だ。黒翡翠(ひすい)などの石を水で研磨した後、表面を精密に彫って黒と白のコントラストで絵柄を表現する。

 幼い頃から絵が好きな陶さんは、丸い小石に花や鳥、魚、昆虫を彫ることを趣味としていた。そして「紅楼夢」を何度も読んでは、この長編小説の世界を自分なりに表現したいと思っていた。そして中国東部の福建省(Fujian)を旅行していた時、石の影彫り職人に出会った。見事な作品を仕上げる職人に教えを請うたが、最初は年齢の問題で背を向けられた。

「私はすでに50代。見習いとして3年間勉強しなければなりませんでした」。陶さんは断られても毎日、職人の工房で彫刻の様子を学んだ。子どもの頃から培ってきた技術を生かし、短期間で匠(たくみ)の技を習得。故郷に戻って自分で作品を作り始め、細かい筆遣いの技術を駆使して創意工夫をこらした。

「紅楼夢」の名場面を彫ることに決めた陶さんは、原作への理解を深めるため文章を繰り返し読み込み、時代を経てさまざまなバージョンの「紅楼夢」も調べたという。

 陶さんは鋼のきりを使って大理石に一つずつ点を打ち込む。笑っているようにも怒っているようにも見える「紅楼夢」のヒロイン・林黛玉(Lin Daiyu)や、無邪気でかわいらしい巧姐(Qiaojie)の姿を、小さな点を重ねることで浮かび上がらせる。1枚の石板を完成させるのに、約1億5000万個の点をたたく必要があるという。

「学校の放課後に子どもたちの表情を観察すると、たくさんのインスピレーションを得ることができる」。人物の表情をよりよく表現するため、陶さんは自宅前の小学校の入り口によく行ったという。1枚の石板を完成させるのに、1年近くかかることもあった。

 10年以上にわたる創作で、陶さんは頸椎(けいつい)などに痛みを抱え、視力も低下した。それでも「人の命は短いので、何かを残したいものだ」と後悔の念はない。そして「家族の無条件の支えのおかげで、夢が実現できた」と感謝する。

「紅楼夢」の名場面を完成させた後、陶さんは娘の助言で新たな「作品」を作り始めた。10年以上の創造の過程と心境を日記の形で記録し、自分の「紅楼夢」に対する思いを伝えようとしている。(c)CNS/JCM/AFPBB News