■「否定しさえすれば、無実を証明する必要もない」

 中国では昨年、セクハラの定義を成文化した新法が可決された。だが、被害を告発する側は今なお大きな障害にぶつかっている。

「自分がうそをついていないことと(中略)訴えが売名行為ではないことを延々と証明し続けなければならないのです」。性的被害を訴えたことのある女性は、嫌がらせを受けることを恐れて匿名でAFPの取材に応じ、こう説明した。

 だが、告発された男性側は「とても簡単」だ。「自分はやっていないと否定しさえすれば、無実を証明する必要もないのです」と女性は話した。

 世界自然保護基金(WWF)の職員、王琪(Wang Qi)さんは、上司から無理やりキスされ、繰り返し嫌がらせを受けていたとネットで訴えた。だが2018年、相手から報復的に名誉毀損(きそん)で訴えられた。

 裁判所は、王さんの訴えは証拠不十分だと判断し、「うそを広めた」として男性に謝罪するよう命じた。

 過去に国営テレビ局でインターンをしていた周暁●(●はおうへんに旋、Zhou Xiaoxuan)さんは、司会者の朱軍(Zhu Jun)氏に体を触られるなどの被害を受けたと訴訟を起こしたが、北京の裁判所は今年、証拠不十分として棄却した。逆に周さんは朱氏に名誉毀損で訴えられた。

 米エール大学法科大学院(Yale Law School)が5月に発表した研究結果によると、裁判所は原告に対して、訴えられた側よりもはるかに強力な証拠を提出するよう求める一方で、友人や同僚など原告に近い人々を証人として認めないことが多い。