【10月29日 東方新報】中国で「インスタグラム(Instagram)+アマゾン・ドットコム(Amazon.com)」の役割を担い、若い女性を中心に3億人が登録するアプリ「小紅書(Red)」に異変が起きている。観光スポットの風景を大量に「盛った」写真が投稿され、商品の口コミ評価を装った「ステルスマーケティング(ステマ=隠れ広告)」が横行するなどの問題が噴出しているためだ。小紅書は公式に謝罪し、対策を図ると表明している。

 小紅書は2013年に誕生したソーシャルメディアおよびEコマースプラットフォーム。インスタグラムのようにユーザーが「映える」写真を投稿したり、アマゾンのように口コミ評価を見ながら商品を購入したりできることで人気となった。今年9月の月間アクティブユーザー数は1億5000万人。ユーザー層は18~34歳が多く、80%が女性で、都市部在住の可処分所得が高い人が多い。サイトにアクセスした人のうち商品購入や会員登録をした割合を示す平均コンバージョン率(CVR)は9%。通常のサイトのCVRは2~3%といわれるので、この数字は驚異的だ。伝統的に公式情報より口コミを重視する国民気質にもフィットしたが、その信頼性が揺らぐ事態が相次いだ。

 10月1日の国慶節(建国記念日)から7日までの秋の大型連休中、小紅書で「美しいピンクのビーチ」と写真付きで投稿されたスポットに訪れた市民が「行ってみたら『豚の肝臓』のような色だった」と不満を書き込んだ。他にも「宮崎駿(Hayao Miyazaki)のアニメの世界」「日本の鎌倉のよう」という観光地の紹介に、「全く違う景色だった」「フィルターをかけすぎだ」と批判が噴出。「フィルターをかける」は「盛る」という意味合いだ。アクセス数を稼ぎたいユーザーや観光関係者が「盛りすぎた」とみられる。中国語で写真は「照片(Zhaopian)」と言うが、発音が同じ「騙(だま)す」に引っかけて「照騙(Zhaopian)」と皮肉る書き込みもある。

 小紅書の商品レビューでは「種草」というコメントがよく見られる。他のユーザーに「購買意欲を芽生えさせるよう種をまく」という意味。しかし最近は企業や知人から商品や現金を受け取ったユーザーが個人の感想を装って、特定の商品を称賛・推奨する悪質な「種まき」が増えているとされる。絶大なCVRを誇る小紅書に企業側が目を付けるのは当然だが、ステマが横行していると考えるユーザーの間からは「もう小紅書は信用できないのでスマホからアプリを削除する。紅(赤)じゃなくて黒(ブラック)だ」と反発が起きている。

 小紅書は10月17日、一部ユーザーが過度な投稿をしていたことを認め、公式サイトで謝罪。今後は新たに客観的な観光地評価システムを作り、より良い商品提示法を提供するとしている。

 中国版LINEといわれる「微信(ウィーチャット、WeChat)」や中国版ツイッター「微博(ウェイボー、Weibo)」に比べ、小紅書は「普通の市民がみんなのために投稿する」というユーザー生成コンテンツ(UGC)として信頼感を高めてきた。中国メディアは「小紅書が信頼を回復するには、原点に立ち返ることだ」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News