【8月26日 東方新報】中国ではインターネットのライブ動画を見て商品を購入することが日常の習慣となっているが、偽物を売り付けられる被害も目立っている。

 上海市に住む女性、沈さんは7月下旬、金のネックレスを販売するライブ動画を見て商品を気に入った。「純金」「返品可能」という触れ込みを信じて注文したが、届いた商品はイメージと違うもの。宝石店で鑑定してもらうと金は1グラムも含まれていなかった。

 沈さんはネットのプラットフォームを通じて売り主に抗議と返品を求めるメッセージを送ったが、返事はない。さらに「警察に通報した」と伝えると、連絡先自体が削除された。沈さんは消費者協会を通じて売り主の情報を教えるよう求めたが、プラットフォーム業者は応じていない。

 こうした詐欺的商法はライブ販売の浸透とともに目立つようになり、「宣伝していた化粧品と違う商品が届いた」「携帯電話を買ったら海賊版だった」というような訴えが増えている。

 昨年11月には、消費者の購買意思決定に強い影響力を持つ「KOL(Key Opinion Leader)」と呼ばれる1人、辛巴(Xin Ba)氏がスープの素となる「ツバメの巣」をライブ動画で販売したが、「偽物鑑定士」で知られる王海(Wang Hai)氏が「商品を買って鑑定した結果、シロップを固めただけのものだ」と告発。辛巴氏は謝罪し、購入額の3倍を補償するルールに基づき計6000万元(約10億1740万円)を支払い、商品のメーカーも200万元(約3390万円)の罰金を科せられた。

 こうした問題を受け、中国の最大手動画プラットフォーム「抖音(Douyin)」は18日、「2021年1月から6月にかけ、不正に関与している疑いのある80万超のアカウントをブロックし、100万超のビデオコンテンツを削除した」と発表。また、詐欺などで使われるキーワードを自動検索するセキュリティーシステムにより、取引に不正のある恐れがあるという警告を1177万回表示したという。さらに各地の警察と協力し、57組のオンライン詐欺グループが摘発され、273人の容疑者が逮捕されたと公表した。

 統計によると、2020年には中国のライブ販売の市場規模は9610億元(約16兆2950億円)に達し、前年比で121.5%と大幅に増加した。2021年には1兆2000億元(約20兆3470億円)に上ると推計されている。

 中国では伝統的に公式情報より「口コミ」を重視する文化があり、専門知識を持ったKOLたちの売り文句を信じてしまう傾向がある。王海氏は「プラットフォームは3年間の記録を保存しているので、売り主の宣伝内容と実際の商品を照らし合わせれば、偽物の摘発は決して難しいものではない」と説明。ただ、ライブ販売市場が急成長しており、監督部門の監視や摘発が追いついていないのが実情だ。(c)東方新報/AFPBB News