【9月14日 AFP】温室効果ガス排出削減を目的としたプログラムの一環として、牛の「トイレトレーニング」に成功したと科学者らが13日、発表した。人間の子どものように子牛を訓練した結果、決まった場所で排尿するようになったという。研究論文が米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に発表された。

 ニュージーランドとドイツの科学者によるチームは、研究が冗談から生まれたことを認めつつ、窒素を多く含む牛の尿を適切に処理すれば、気候変動対策として真に長期的なメリットがあると述べた。

 ニュージーランド・オークランド大学(Auckland University)のダグラス・エリフェ(Douglas Elliffe)氏は「尿の10〜20%を回収できれば、温室効果ガス排出と硝酸性窒素溶脱を大幅に削減するのに十分だろう」と言う。

 エリフェ氏によると牛の尿に含まれる窒素は、時間がたつと亜酸化窒素と硝酸塩という二つの問題物質に分解される。亜酸化窒素は強力な温室効果ガスの一つであり、また硝酸塩は土壌に蓄積されて河川に溶出する。

 公式データによると、世界の温室効果ガス総排出量の約5%、ニュージーランドでは10%弱を亜酸化窒素が占め、その半分以上が家畜関連の排出だという。

 研究チームの一人、リンゼー・マシューズ(Lindsay Matthews)氏は、2007年にラジオ番組のインタビューを受けた際、司会者が言ったジョークがきっかけで牛のトイレトレーニングを思い付いた。

 当初は「変わった研究チーム」とみなされたが、ドイツの科学者らと協力し、餌を褒美にして16頭の子牛に決まった場所で排尿するよう訓練したところ、3歳児と同じような結果が得られたという。

 今回の研究についてエリフェ氏は、牛のトイレトレーニングは可能だという「コンセプト実証」だと述べている。

 今後の課題は、大規模な牛の群れにトレーニングを拡大すること、またニュージーランドのように牛舎ではなく屋外で過ごす時間が大半の環境にある牛に応用することだという。

 ニュージーランドの温室効果ガス排出量の約半分は農業由来で、その大半がメタンと亜酸化窒素の形で排出されている。(c)AFP