【9月9日 AFP】エチオピア北部アムハラ(Amhara)州の村で今月初め、少なくとも125人の住民が虐殺されたと、地元の医師らや当局者が8日、AFPに明らかにした。隣接するティグレ(Tigray)州の与党でエチオピア連邦政府と対立する「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」の犯行だとの指摘があるが、TPLF側は否定している。

 エチオピア北部では政府軍とティグレ人系反政府勢力の紛争が10か月にわたって続いており、これまでに数千人が死亡。虐殺の報告も相次ぎ、大きな人道危機が起きている。

 アムハラ州の町ダバット(Dabat)で病院長を務めるムルゲタ・メレサ(Mulugeta Melesa)氏はAFPに対し、ダバット近郊のチェンナ(Chenna)村で「125人の死者が出た」と語った。同氏自身、遺棄された多数の遺体を見たという。現地では住民らが「周辺一帯で遺体を探しており、集計も続いている」としている。

 AFPでは、犠牲者の数や民間人か戦闘員かの内訳について、独自に確認できていない。

 TPLFの報道担当者は、自分たちの犯行ではないと言明。「民間人の殺害にわれわれが関与しているとの主張を断固否定する」とツイッター(Twitter)に投稿し、「すべての残虐行為」について独立調査を行うよう求めた。

 連邦政府の独立機関「エチオピア人権委員会(Ethiopian Human Rights Commission)」は、虐殺の報告を「憂慮する」と述べ、警察が犠牲者の数と身元確認を行っていると明らかにした。

 エチオピアでは、2019年のノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)受賞者のアビー・アハメド(Abiy Ahmed)首相が昨年11月、TPLFが軍の拠点を襲撃した報復としてティグレ州に派兵して以来、北部で紛争が続いている。

 TPLFは今年6月、多くの予想を覆して州都メケレ(Mekele)を奪還し、政府軍はティグレ州からほぼ撤退した。その後、TPLFは近隣のアムハラ州やアファール(Afar)州への攻勢を開始。数十万人が避難を余儀なくされる中、即決処刑や無差別砲撃が行われている疑いが指摘されている。

 TPLFはこれらの疑惑を否定。一連の攻勢は、ティグレ州への人道支援の封鎖を解除し、親政府勢力の再編成を防ごうとしているにすぎないと主張している。

 ティグレ州と周辺地域では甚大な人的被害が出ており、国連(UN)は40万人が飢餓に近い状態にあると警告している。(c)AFP/Robbie COREY-BOULET