【8月28日 AFP】東京パラリンピックの自転車競技では、晴眼の実力者が視覚障害のある選手のパイロットとして多く参加しており、タンデム(2人乗り)のレースは激しい戦いとなっている。パイロットはパートナーのハンドル役になるだけではなく、一緒にペダルを動かし、他のパラリンピック競技のガイド役よりもさらに直接的にフィニッシュラインを駆け抜ける手助けをしている。

 フランス人レーサーのフランソワ・ペルビス(Francois Pervis)とコランタン・エルムノー(Corentin Ermenault)に加え、ドイツ人レーサーのローベルト・フェルステマン(Robert Foerstemann)は、これまで五輪とUCIロード世界選手権大会(UCI Road World Championships)のいずれかでメダルを獲得した実績があり、今大会では彼らに加えて有名選手が大勢参加している。

 男子B(視覚障害クラス)でレースに出場するフランスのアレクサンドル・ロベラ(Alexandre Lloveras)は、前席に座るのがアマチュアではなく元王者であることは明確なアドバンテージになるとの認識を示し、「コランタンと(昨年)11月に初めて一緒に乗ったとき、彼は競技を再開したばかりだったけれど、すぐに通常のパイロットよりもはるかにパワーがあると感じた」とAFPの取材で明かした。

 ロベラとエルムノーのペアは、最初の種目となった25日のトラック個人4000メートル追い抜きでいつも通りのタイムが出せず4位に終わった。しかし、31日には世界選手権(UCI Para-cycling Road World Championships)で2位を記録したロードのタイムトライアルでのチャンスを狙う。

 一方、世界選手権の個人で七つの金メダルに輝くペルビスも、ラファエル・ボジレ(Raphael Beaugillet)とタッグを組んで大会に出場する。

 しかしながら、フランス代表のチーム監督は、プロレベルのパイロットを起用することはレースを激化させるリスクがあるとして、「すさまじいほどにどんどんプロ化している」と指摘し、「アマチュアのパイロットと仕事を続けてかなりレベルが上がっていき、たとえ彼らのレベルが高くても、それで十分ではなくなる」と語った。

 ボジレとペルビスは、ドイツ代表のカイクリスティアン・クルーゼ(Kai-Kristian Kruse)と五輪の銅メダリストであるフェルステマンの強豪ペアと対戦する予定となっている。

 パイロットの起用には一定の制限が設けられており、プロ契約中ではないことや過去12か月間で世界大会に出場していないことが条件となっている。

 強豪選手とペアを組んでいるパラリンピアンたちは、自分たちのパイロットがアドバンテージを与えてくれると公言している。ボジレは「フランソワが自転車に乗るとなったとき、『これで自分たちは、何かを成し遂げる方法をつかんだ』と思った」と明かした。

 しかし、それには何の確約もないことも付け加え、「それも全て理論上の話だ。トレーニングをしなくてはならない」と語った。(c)AFP/Clement VARANGES