■主権と安全保障

 アナリストらによると、これらのタリバン指導部との会談の目的は、アフガン国内の戦闘を近隣諸国に波及させないことと、中央アジアにおけるテロの増加を防ぐことだ。

 旧ソ連諸国から成る集団安全保障条約機構(CSTO)の元事務局長、ニコライ・ボルジュジャ(Nikolai Bordyuzha)氏は「中央アジアを平和に保つためには、タリバンと話し合う必要がある」と語る。

 中央アジアのいくつかの国は米軍に後方支援を提供してきたが、タリバンは北方の近隣諸国に対し、何の策略もないとして懸念を払拭(ふっしょく)しようとしている。

 ジルノフ大使によるとロシア側は、アフガニスタンが「世界の全ての国」と平和的な関係を持つことを求めたという。これに関して「タリバンはわれわれに約束済みだ」と言う。

 ただしロシア外務省は、タリバンが立ち上げるだろう新政権との親密な関係構築は急がない姿勢を示唆し、タリバンの動きを監視した上で承認するかどうかを決定するとしている。

 今夏、タリバンがアフガン全土を進撃していく間、ロシアは同盟国のウズベキスタンやタジキスタンとアフガン国境近くで軍事演習を行い、武力を誇示した。

 中央アジア問題の専門家アルカディ・ドゥブノフ(Arkady Dubnov)氏によると、現在ロシアはこの地域での軍事的プレゼンスを高めようとしている。「これらの国は程度の差こそあれ、ロシアの支援を受けざるを得ないだろうが、いずれも安全保障と引き換えに国の主権を譲ろうとはしない」

 アフガニスタンの中央アジアの三つの隣国のうち、ウズベキスタンとトルクメニスタンはすでにタリバンとハイレベル会談を行っており、タリバンの統治を承認するだろうとドゥブノフ氏はみる。残るタジキスタンはまだタリバンと接触していない。