【8月20日 AFP】アフガニスタンで多くの国が大使館を閉鎖し、職員らの国外退避に躍起になっているさなか、ロシアはじっと動かずにいる。反政府武装闘争を続けてきた旧支配勢力タリバン(Taliban)が、首都カブールに到着するのを待ち受けてきたからだ。

 イスラム強硬派タリバンの起源は1980年代、旧ソ連軍のアフガン侵攻に抵抗した紛争にさかのぼる。だが、タリバンに対する現在のロシアの見方は実利的だ。

 アナリストらによると、ロシア政府は複数の軍事基地を持つ中央アジアにおける権益を守ることを重視し、自国に隣接する地域で政情不安やテロの可能性が広がることは何としても避けたいと考えている。

 ロシア外務省の報道官は16日、カブールの状況は「安定しつつある」と述べ、タリバンが「治安を回復」し始めたとの見解を示した。

 さらにロシアの駐アフガニスタン大使ドミトリー・ジルノフ(Dmitry Zhirnov)氏は、タリバンがすでに大使館を警護しており、建物の安全をロシア政府に保証したと明かした。

 タリバンの戦闘員らは、ロシア人外交官の「髪の毛一本すら傷つけられることはない」と約束したと言う。

 翌17日にジルノフ大使はタリバン幹部と会い、ロシア国営テレビで「前向きかつ建設的」な会談だったと述べた。30年前とは全く対照的だ。

 10年に及んだ旧ソ連の破滅的な軍事介入は、1989年に終わった。91年末に解体したソ連を引き継いだロシアは翌92年、アフガン新政権を樹立しようとカブールに押し寄せたイスラム強硬派らの砲弾を浴びながら、懸命に大使館員らを退去させた。

 それが今やロシア政府は、自国がテロ組織に指定しているタリバンの指導部をモスクワでの会議にたびたび招き、タリバンの国際的信用を向上させている。