【12月28日 AFP】米大統領選でのドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の敗北を信じない支持者らが大挙して、保守系の米FOXニュース(Fox News)にいら立ちを募らせ、より小規模な新興ケーブル局の「ワン・アメリカ・ニュース(OAN)」や「ニュースマックス(Newsmax)」に流れている。いずれも、ジョー・バイデン(Joe Biden)次期大統領の勝利に否定的な報道を続ける右派メディアだ。

 この報道姿勢は、FOXニュースに幻滅したトランプ支持者らの心をつかんだ。こうした視聴者たちは、FOXニュースにはトランプ氏を支持する姿勢が足りず、同氏の敗北を正式なものとして報じたのは過ちだと考えている。

 OANのチャールズ・ヘリング(Charles Herring)社長は、大統領選前後に最も視聴された米ケーブルテレビ局の上位10位以内に同社のチャンネルがランクインしたとAFPに語った。OANには、FOXニュースの「明らかな左傾化」に不満を訴える視聴者の声が続々と届いているという。

 ニュースマックスも大統領選後、史上初めて視聴者数100万人の大台を突破した。

 トランプ氏自身、2016年と2020年の大統領選の「最大の違い」はFOXニュースの報道姿勢だったと考えていると述べ、支持者らにOANとニュースマックスを見るよう勧めている。共和党内でも、これら2つの新興局への出演要請に応じる幹部陣が増え、トランプ氏もインタビューを受けた。

■「エコーチェンバー」

 米テンプル大学(Temple University)のケビン・アルセノー(Kevin Arceneaux)教授(政治学)は、ニュースマックスについては編集姿勢がFOXニュースに比較的似ており、「一定の報道規範を有している」と語る。

 一方、OANはニュースネットワークを自称しているものの、「自信をもってニュースネットワークに分類することは、私にはできない」とアルセノー氏は指摘。むしろ、OANは「極右に偏った陰謀論のための空間であり、エコーチェンバーだ」との見方を示した。(エコーチェンバー:同じような意見が反響し合って増幅されていく閉鎖的な空間のこと)

 OANで以前プロデューサーをしていたクリス・ポコック(Chris Pocock)氏は、その編集手法について、「トランプ氏の敗北を受け入れられない保守派のために」意図的に「全く異なる現実を創り出している」と説明する。

 ただ、アルセノー氏によれば、問題なのはOANの伝える情報そのものよりも、選挙で選ばれた共和党議員らがそれに同意しているように見えることで、そうした議員らの態度がOANに正当性を与えてしまっている点だ。

 その結果、米二大政党が「異なる事実について、全く異なる議論を展開する」という状況が起きる恐れがあるとアルセノー氏。「そのような状況では、健全な民主主義を維持するのは非常に難しい」と述べた。(c)AFP/Thomas URBAIN