【2月3日 AFP】一見ごくありふれたニュースサイトのようだが、よく見ると広告も購読案内も一切見当たらず、並んだ記事の多くは何週間も前の古いニュースだったり、企業や団体の記者発表にすぎなかったりする──地方紙の衰退した米国各地で、こうしたウェブサイトが続々と立ち上げられている。運営しているのは、いずれも政治団体だ。

 米ミシガン州を拠点とする「カラマズー・タイムズ(Kalamazoo Times)」も、その一つ。既存の新聞のウェブ媒体そっくりのページ構成だが、代表者の名前や財務情報は明記されていない。

 これらの模倣ニュースサイトが狙うのは、デジタル時代に対応できずに地方紙が相次ぎ廃刊した結果生まれた「ニュース砂漠」の穴埋め役だ。

 ミシガン州には「カラマズー・タイムズ」の他にも、「ランシング・サン(Lansing Sun)」「バトルクリーク・タイムズ(Battle Creek Times)」「グランドラピッズ・リポーター(Grand Rapids Reporter)」など、地方都市名を冠したほぼ同じ見た目のウェブサイトが約40ある。その全てが、保守派の政治コンサルタント、ブラッドリー・キャメロン(Bradley Cameron)氏率いる「メトリック・メディア財団(Metric Media Foundation)」傘下のサイトだ。

 同財団は、公式サイトによれば「公開情報データベース」や「報道基準を厳格に順守した国内各地のフリーランス記者」を活用した多数の地方ニュースサイトに資金援助を行っているという。AFPの問い合わせに、財団から回答はなかった。

 これらの「ニュースサイト」は、デマや露骨な誤りを含む陰謀説を掲載しているわけではないが、党派的な偏りが読者を混乱させる恐れがある。

 こうしたサイトの激増によって「市民にとっては、何を信じればよいかを判別するのが恐ろしく難しい時代」が訪れていると、米ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)ジャーナリズム倫理センター(Center for Journalism Ethics)の統括責任者キャサリン・カルバー(Kathleen Culver)氏は指摘。「報道の体裁を取りながら、報道規範に準拠せず、党派性を隠そうとしているサイトもある」と警鐘を鳴らした。