【10月7日 AFP】米国生まれの陰謀論「Qアノン(QAnon)」が、新型コロナウイルス流行であおられる恐怖に乗じて、欧州に根を張ろうとしている。

 Qアノンは2017年、「Q」という米政府高官とされる人物のソーシャルメディアへの投稿から始まった。Qの主張は、世界中で「悪魔崇拝的」な児童性的虐待と人身売買を行い、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領に敵対する一派が「新世界秩序」を画策しているというものだった。

 この陰謀論が、欧州のワクチン反対派や白人至上主義者、政府に不信感を抱く人々らに受け入れられ始めている。インターネット上では欧州版Qアノンが次々と立ち上がり、ベルリン、ロンドン、パリといった大都市では、マスク着用や新型ウイルス感染抑制策に異議を唱える人々が、Qのメッセージを軸とした抗議デモを行っている。

 フェイク(偽)ニュースの監視団体「ニュースガード(NewsGuard)」は7月の報告書で、「米国での陰謀論(Qアノン)は目に見える形で広がったが、欧州でも根を張り拡散しつつあることは、あまり注目されていない」と警告。また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による危機が「触媒」になっているとも指摘した。

■飛躍的な増加

 ニュースガードの報告書によると、大西洋を渡ったQアノンの陰謀論は欧州版、あるいはもっと地域的なアレンジを施され、既存の陰謀論や陰謀論グループと結びついているという。7月時点でQアノンのサイトの英仏独伊を合わせたフォロワー数は45万人に届こうとしていた。

 ニュースガード欧州サイトのチネ・ラベ(Chine Labbe)編集長によると、昨年末から今年初めにかけて、Qアノン関連のウェブサイトやアカウント、グループが無数に登場し、そのフォロワーは「飛躍的に増加し続けている」という。

 欧州版Qアノンが広めている主張は、新型ウイルスの「パンデミック(世界的な大流行)は、ビル・ゲイツ(Bill Gates)氏を頂点とする世界のエリートたちが仕組んだ、世界中の人々にワクチンを接種するための計画の一部だ」というもので、中には、感染予防策のソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)は米中央情報局(CIA)が編み出した拷問手法だという主張まである。

 インターネット上の過激思想を研究するドイツの専門家、ミロ・ディトリヒ(Miro Dittrich)氏は、2001年の米同時多発攻撃の直後など、危機の際に陰謀論がまん延することは珍しくないと話す。そして、どうにもできない状況を前に人々は無力感を抱き、非難を向ける矛先を探そうとするのだと説明した。

 今回の新型ウイルス危機については、「外出制限が大きく影響している」と述べ、社会環境から孤立させられた人々が、インターネットを見て多くの時間を過ごしている状況を指摘した。