【11月10日 AFP】南米ペルーの議会(一院制、定数130)は9日、マルティン・ビスカラ(Martin Vizcarra)大統領(57)の罷免を可決した。ビスカラ氏をめぐっては、モケグア(Moquegua)州知事時代の2014年、不動産開発業者から約62万ドル(約6500万円)の賄賂を受け取ったとする疑惑が持ち上がり、審議されていた。

 審議は8時間近くにわたり、賛成105、反対19、棄権4で大統領の罷免が可決された。賛成票は罷免に必要とされた87票を大きく上回った。

 憲法の規定に従い、来年7月までの任期は、マヌエル・メリノ(Manuel Merino)国会議長(59)が引き継ぐ。メリノ氏は10日の臨時議会で宣誓し、大統領に就任する。次期大統領選は来年4月に実施される予定。

 ペルーでは前任者のペドロ・パブロ・クチンスキ(Pedro Pablo Kuczynski)氏も汚職疑惑が持ち上がり、2018年に罷免決議案が採決される前日に辞任を表明した。

 政治評論家のアウグスト・アルバレス・ロドリッチ(Augusto Alvarez Rodrich)氏はAFPに対し、「ペルーは制度的に脆弱(ぜいじゃく)さを増す。メリノ氏は新型コロナウイルス禍で総選挙に臨むというシナリオを課され、無力な大統領となるだろう」と述べた。

 2016年以来、3人目となる大統領の交替には、1821年にスペインから独立したペルーに特徴的な制度的脆弱性が表れている。

 ペルー憲法では、大統領が欠けた場合は副大統領が引き継ぐことになっているが、ビスカラ政権では1年前、別の政治危機で副大統領だったメルセデス・アラオス(Mercedes Araoz)氏が辞任しているため、国会議長のメリノ氏が継承することになった。

 新型コロナウイルスの流行によって、ペルーは死者約3万5000人、感染者92万人と大きな打撃を受け、死亡率は世界でも上位となっている。新型コロナの一部影響による深刻な経済危機から脱しようとする中、国民から強い支持を得ていたビスカラ氏が弾劾によって退陣することとなった。(c)AFP