【8月12日 CNS】創業から400年のはさみ専門店、300年受け継がれる鶏料理、100年愛されてきた粽(ちまき)…。中国でなじみのある製品や食品を手がける老舗企業が次々と中国A株(人民元建株式)市場に上場している。短期間で時価総額が10倍となる老舗もある一方、撤退やマイナス成長という老舗もある。「二回目の創業」といえる上場のタイミングで、経営スタイルを変革できるかがカギという。

 安徽省(Anhui)の老舗料理店「同慶楼(Tongqinglou)」が最近、上海証券取引所に上場したことに続き、「中華第一鶏」と称される煮込み鳥で有名な山東省(Shandong)の老舗「徳州扒鶏(Dezhou Braised Chicken)」、雲南省(Yunnan)のプーアル茶「瀾滄古茶(Lancang Ancient Tea)」、はさみ専門店の張小泉(Zhangxiaoquan)、浙江省(Zhejiang)のちまき専門店「五芳斎(Wufangzhai)」などが次々と上場申請している。

 中国商務省が正式に「中華老字号」(中国伝統の老舗)に認定しているのは1128社で、平均で160年の歴史も持つ。これまでA株市場に進出した老舗企業は48社で、飲食業、レストラン、貴金属、漢方薬、農林水産物などの業種が占める。

 老舗企業の上場ブームについて、愛建証券アナリストの余銭広(Yu Qianguang)さんは「上場により、それまでの老舗の経営では考えられないほどの発展と収入がもたらされるため」と指摘。この20年間、中国の食品・飲料産業が安定成長し、経営業績も長足の進歩を遂げていることから、時価総額が高い企業が多く現れている。中国伝統の酒造大手「貴州茅台酒(Kweichow Moutai)」は時価総額1兆8000億元(約27兆円)に達し、A株市場でトップとなっている。調味料大手の海天味業(Foshan Haitian Flavouring & Food)は6年間で時価総額は383.86億元(約5850億円)から4000億元(約6兆965億円)に激増した。

 しかし、全ての老舗が上場で成功しているわけではない。最近では天津市(Tianjin)の包子(肉まん)の老舗「狗不理包子(Goubuli)」は上場廃止となった。北京ダックで有名な「全聚徳(Quanjude)」は2019年の財務報告書によると、売上高は前年比11.8%減の15.66億元(約239億円)に落ち込み、上場から13年目で初めてマイナスを記録した。

 中南財経政法大学(Zhongnan University of Economics and Law)データ経済研究院の盤和林(Pan Helin)院長は、「上場さえすれば後は楽にもうかると思ったら大間違い。上場は『二回目の創業』、つまり新たな企業改革が求められる」と指摘。老舗のブランドにあぐらをかくのではなく、若い消費者を引きつける魅力やコストパフォーマンスを必要とする。上場で成功した老舗企業は伝統的なビジネスモデルから抜け出し、消費者のニーズに合わせた新商品開発、デジタル化やモノのインターネット(IoT)による商品管理、インターネット販売などに力を注いでいる。(c)CNS-経済日報/JCM/AFPBB News