■不正会計疑惑

 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は2019年1月以降、特にワイヤーカードのアジア部門で不正会計があると複数回報じていたが、経営陣らはこれを否定していた。

 ワイヤーカードは決済サービスプロバイダー(PSP)として2008年以降、不正決済防止に関する複数の欧州指令の対象となっているが、同社の会計はそれほど精査されてはいなかった。

■経営陣

 ワイヤーカードは19日、ブラウン氏のCEO辞任を発表。コンプライアンス責任者である米国人ジェームズ・フライス(James Freis)氏が18日、暫定CEOに就任した。フライス氏は、ドイツ取引所(Deutsche Boerse)のコンプライアンス責任者を務めていた。

 一方、ヤン・マルサレク(Jan Marsalek)最高執行責任者(COO)は、一時停職となった数日後の22日に解雇された。

 5人で構成される同社の監査役会は、元ビジネスコンサルタントで金融業界に転向し、ドイツ取引所での勤務経験もあるトマス・アイヒェルマン(Thomas Eichelmann)氏が率いている。

■消えた現金の背後にいるのは誰か

 19億ユーロは、フィリピンの2銀行の信託口座に預けられていたとされていた。フィリピン中央銀行は21日、不明金は同国の金融システムに流れ込んではいないと明らかにした。

 ドイツのニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)は、消えた現金の管理責任者として、フィリピンで弁護士として働くマーク・トレンティーノ(Mark Tolentino)氏の名前を挙げている。フィリピンの金融街マカティ(Makati City)在住のトレンティーノ氏のウェブサイトは22日にはなくなっていた。一般人からの法律相談に答えるフェイスブック(Facebook)ページの動画は残ったままだ。

 一方、不明となっている現金が預金されていたとされる同国大手銀バンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズ(BPI)は、従業員が「予防的停職中」であるとAFPに認めた。メディアは、BPIのアシスタントマネジャーが預金されているはずの現金に関する偽造文書に署名していたと報じている。(c)AFP