【6月24日 AFP】ドイツ検察当局は23日、不正会計疑惑が浮上しているオンライン決済サービスの独ワイヤーカード(Wirecard)のマークス・ブラウン(Markus Braun)前最高経営責任者(CEO)を市場操作の疑いで逮捕したと発表した。

 同社ではバランスシートの4分の1に相当する19億ユーロ(約2280億円)が所在不明になっていたが、同社は22日、現金は「存在していなかった」可能性があると認めた。ワイヤーカードは2019年、ソフトバンクグループ(SoftBank Group)から9億ユーロ(約1000億円)の出資を受けている。

 2000年代初めに起こった米エネルギー会社エンロン(Enron)の不正会計事件に匹敵する可能性があるといわれるワイヤーカードの不正会計疑惑についてまとめた。

■主な事業

 ワイヤーカードは店舗やオンライン、携帯電話で、クレジットカードや米アップル(Apple)のアップルペイ(Apple Pay)、米電子決算大手のペイパル(PayPal)などでの支払いを導入できるオンライン決済サービスを主力事業としている。また、オンライン決済サービスから得たデータに基づく分析サービスも提供している。

 同社によると顧客は全世界で約30万社に上り、中国のモバイル決済システム「アリペイ(Alipay)」や「微信(WeChat、ウィーチャット)」、アップルやグーグル(Google)など大手と取引をしている。

 またウェブサイトでは、KLMオランダ航空(KLM Royal Dutch Airlines)やドイツテレコム(Deutsche Telekom)、米運輸大手フェデックス(FedEx)も顧客だとしている。

■事業拡大

 ワイヤーカードは1999年に設立。当初はポルノや賭博サイトへサービスを提供していた。

 そこから安定した収入を得られたため、2000年初めに起こったインターネットバブルを生き抜くことができ、2000年代から2010年代に電子商取引が増加するにつれ、事業も拡大していった。

 創業者であるオーストリア人のブラウン氏は設立当初に出資比率を7%に引き上げ、筆頭株主となっている。

 2005年にはドイツ・フランクフルト証券取引所に上場、2018年にドイツ株価指数(DAX)の主要構成銘柄となった。

 2019年初めにはワイヤーカードの市場価値は約170億ユーロ(約2兆円)に達したが、今回の不正疑惑を受け20億ユーロ(約2400億円)にまで急落した。