【6月27日 AFP】タイでは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により閉鎖に追い込まれた観光地から、飢えを避けるためにゾウ1000頭が「里帰り」している。だが、地元に帰れば安心というわけではない。

 観光の中心地チェンマイ(Chiang Mai)では、多くのゾウ使いが公園や「保護区」と呼ばれる飼育施設で、外国人観光客相手にゾウに芸をさせていた。

 こうした飼育施設の一部は、ゾウを「傷つける」虐待的な調教方法で物議を醸している。ゾウの餌代は、一生に一度の体験を求めてやってくるバスいっぱいの乗客から得られる観光収入で賄われている。

 だが、新型ウイルスの流行により、世界中で人々の移動が止まった。3月中旬にはタイの公園の多くが閉鎖され、飼育下に置かれたゾウ約3000頭が食いぶちを稼げなくなり、飢えに直面し、故郷へ戻ることとなった。

 タイ・エレファント・アライアンス協会(Thai Elephant Alliance Association)のティーラパット・トロングプラーカーン(Theerapat Trungprakan)会長は、ここ2か月で約1000頭のゾウがゾウ使いと共におのおのの故郷に帰っていると語った。

■故郷で課題となる餌の確保

 しかし、地元に戻れば安心というわけではない。

 ゾウの里帰り先の一つ、チェンマイから180キロほど離れた北部の村フアイパクート(Huay Pakoot)では、4世紀前から、カレン人が何世代にもわたりゾウを飼育している。ゾウの数は通常10頭未満だが、現在は90頭以上が、400人の村人と共に暮らしている。

 村の周りを囲む広い森はトウモロコシ栽培のために伐採されており、これほど多数のゾウの腹を満たすようなものは何もない。

 民家の裏で眠るゾウもいるが、多くはゾウ使いの監視のもと森で夜を過ごす。時々逃げ出し農場の周りを歩き回るため、作物を守ろうとする農家に攻撃される恐れもある。

 飢えを避けるためにはるばる帰郷したゾウ使いにとって、ゾウの食料として1頭あたり300キロの植物を見つけることは大きな課題だ。代わりに飼料を購入するとなると、1日あたり約500バーツ(約1700円)かかるという。(c)AFP/Pitcha DANGPRASITH and Sophie DEVILLER