【5月22日 AFP】南極大陸から細長く延びた南極半島(Antarctic Peninsula)の一部で、地球温度の上昇とともに藻類の大発生による「緑の雪」が広がり、一帯が緑色に変わると予想する研究結果が20日、発表された。

 しばしば、植物がまったく育たないと考えられがちな南極大陸だが、実際には数種の藻類が生育している。これらの藻類は解けかかった雪の上で育ち、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収する。

 英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)と英南極調査所(BAS)の研究チームは、世界で最も不毛な大陸で緑藻類が現在分布する面積を測定するために、衛星画像と地上観測を組み合わせて用いた。

 その結果、雪上で緑藻類が大量に繁殖している独立した領域が南極半島全体で1600か所以上特定された。総表面積は1.9平方キロに及んでいた。

 ケンブリッジ大植物科学部のマット・デイビー(Matt Davey)氏は、AFPの取材に「この数字は地球規模で見ると比較的小さいけれども、植物が非常に少ない南極では、この程度の植物資源でも極めて重要な意味を持つ」と語る。

「多くの人が、南極は雪とペンギンだけだと考えている。だが、周縁部には植物が大量に存在している」

 研究チームの推算によると、南極半島の藻類は現在、自動車の平均的な移動約87万5000回分に相当する量のCO2を吸収しているという。

 また、藻類繁殖領域の大半はペンギンのコロニー(営巣地)から5キロ以内に位置することを、研究チームは明らかにした。ペンギンのふんが優れた肥料になっているとされた。

 極地域は世界の他の地域よりもはるかに速いペースで温暖化が進行している。南極大陸の低海抜の沿岸地域では、雪のない夏に見舞われて藻類が消失する日も近いだろうと、研究チームは推測している。

 だが、沿岸部の藻類の消失は、気温が上昇して海抜がより高い地域にある雪が軟化するのに伴い、大規模な藻類繁殖領域が優勢となることで相殺される可能性が高く、「全体としては炭素隔離の増加」が起こると、研究チームは説明している。(c)AFP/Patrick GALEY