【11月29日 AFP】南極大陸のごく一部の地域では、春になると雪が解けてコケや地衣類、草などが生える。そこにはハエやダニ、微生物のコロニーが共存し、採餌や繁殖活動を何百万年もの間続けている。

 この豊かな生物多様性は、極度の寒さと強力な海流に囲まれた大陸の孤立性の均衡が古代より保たれていることによって保存されている。

 だが、27日に米科学誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に掲載された研究論文の中で科学者チームは、気候変動が原因で侵入生物種が南極に定着しやすくなると主張している。たとえ南極大陸の温暖化が地球の他の地域より遅いペースで進行するとしても、この傾向は変わらないという。

 論文の共同執筆者で、英南極調査所(BAS)の専門家のピーター・コンベイ(Peter Convey)氏は「気候変動は、侵入を妨げる障壁を低減するため、よりストレスが少なくなるとともに(中略)定着に伴う問題を減らす」と説明した。

 コンベイ氏は、南極に生息する生物種が温帯や熱帯気候にみられる生物種に比べて高い密集度で集まることが可能として、トビムシとして知られる微小な節足動物は1平方メートルの範囲に100万匹が密集できると指摘した。

 だが、遠隔地の南極大陸を毎年訪れる研究者数千人と観光客5万人が、植物や昆虫などを一緒に持ち込むことで、このバランスが乱される恐れがある。

 雑草の一種のスズメノカタビラ(学名:Poa annua)はすでに一部の島への定着の足掛かりを得ている上、これとともに2種類のハエが人間によって持ち込まれた。